アウトレイジ : 映画評論・批評

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アウトレイジ

劇場公開日 2010年6月12日
2010年6月8日更新 2010年6月12日より丸の内ルーブルほかにてロードショー

北野武が新たなステージに立ったことを予感させる、饒舌な群像劇

北野武自らが<フェリーニ病>と揶揄する「TAKESHIS'」「監督・ばんざい!」「アキレスと亀」という内省的な<メタ芸術家映画3部作>を経た、原点である暴力映画への帰還を祝福したい。

しかし、「アウトレイジ」には、初期の「ソナチネ」を覆っていた弧絶した主人公の寡黙とメランコリー、<死>に魅入られた無常観、酷薄なニヒリズムは欠片もない。高度資本主義社会とうりふたつのヤクザ組織のタテ構造の中で、怒号と叫喚、躁病じみた果てのない饒舌が飛び交い、裏切りと打算とエゴがむき出しにされた、あさましいまでの下克上の群像劇が展開される。

かつて初期の北野映画の反物語性を鋭く批判した脚本家・笠原和夫の傑作「仁義なき戦い/代理戦争」を本歌取りしたような既視感を与えるのは皮肉でもある。ジャンル映画の骨法を抽出すれば自ずと似てくる所以だろうか。止めどころもなくワル乗りする石橋蓮司のダメ組長ぶりが「代理戦争」の山守(金子信雄)や打本(加藤武)にダブってみえてくるほど可笑しい。北野組のキャストを一掃したのも成功しており、なかでも三浦友和加瀬亮が旧来のイメージを刷新し、得体の知れないワルを嬉々として演じて出色である。

アウトレイジ」には、殺戮の見本市と称するほかない陰惨さ寸前の<暴力>と漫才で鍛えられたアップ・テンポの<笑い>がぎりぎりでせめぎあい、同居している。

北野武の新作は、長年の自説である、漫才師を出自とするTVコメディアンと、脱撮影所の時代を象徴する国際的な映画作家の間を往還するという<振り子理論>にも終止符を打ち、新たなステージに立ったことを予感させるのである。

高崎俊夫

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