劇場公開日 2010年6月5日

「けっこう残酷」告白(2010) うえすぽんさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0けっこう残酷

2016年8月5日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

怖い

松たか子演じる女教師が自身の娘が殺されたことの生徒への告白、復讐が主な中身である。
少年少女たちの心理を同級生・教師・保護者の3方向から揺さぶっていく。また大人たちも保護者であれば自身の子どもからといったように心を揺さぶられている。その結果、殺人やいじめのような事件につながっていくという。
しかし心の動揺は自分の内側から来るものともいえる。自身の身の回りの環境や立場を自分なりに都合よく解釈した結果、それら残酷なものへと発展していくような気がする。映画の中でも「エイズの血液入りの牛乳を飲んでしまったクラスメイトに対する過剰反応」「深刻な状況をあえて騒ぐことによって無理やり隠すクラスメイト」「自身の存在を生き別れた母に認めてもらいたいがためにエスカレートしていく発明」「何とか幼いころのかわいい我が子の姿を忘れることができずエゴを発揮する親」など様々なところで垣間見ることができた。
そんな中、女教師は我が娘殺害の復讐を果たそうとするのだが、ほかの周りの人物と異なり、周りに流され動揺することがない。よく言えば目標達成のために冷静な人間といえるが、悪く言えば人間味の欠ける姿であったような感じがした。
「命」をテーマにした映画であろうが、あまりに映画の中での命の価値が軽すぎて、結局映画の中の世界だし…ということで、女教師が黒板に大きく書いた「命」、に関するメッセージは伝わってこなかった。
しかし、学校教育におけるいじめの構図や家庭環境との問題のつながりなどに問題提起をしてくれるような作品であった。
最後の女教師の「なーんてね」という言葉の内容は明らかになっていないが、少年AかB(どっちか忘れた)が自身の爆発装置の発明で自分の母親を殺してしまったんだという電話での脅しに対してであろう。確か映画の中で、女教師が爆発物を解除したという描写はなかっただろうか…。しかもタイムスリップして爆発している光景を少年が目撃するというのも、映画の中で唯一SFな場面である。結局エイズの血入りの牛乳だって嘘であるのだから、女教師にとっての本当の復讐とは少年たちが自分たちで辛い思いをすることではなかったのだろうか…。女教師がわざといじめを助長させたのも、それ自体が復讐ではなく、それによって少年自身が自らを追い詰めることが目的だったのだろう。
R15指定にしては残酷な描写が多く怖かったのと、残酷さが行き過ぎてメッセージが薄れ、結果として残酷なだけでなんかすっきりせず終わる感じがしたので★3つにした。ただ残酷ながらも飽きずに見続けることができた。ストーリーは面白い。

うえすぽん