劇場公開日 2010年10月9日

  • 予告編を見る

「子役の演技が素晴らしく、身につつまされます」冬の小鳥 流山の小地蔵さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0子役の演技が素晴らしく、身につつまされます

2010年9月27日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 それにしても冒頭は、痛々しい。新しいよそゆきの服を着てお出かけ。焼肉屋に入り、好きなメニューを注文し、二人で宿にお泊まり。翌日にはケーキを買い、バスに乗るところまでは、どこにでもありそうな親子の幸せな関係に見えました。ジニはお父さんにぴったりくっいて甘えていました。冬枯れの畑の中に建つ大きな門のある建物に着くまでは。

 だからいきなりの別れには、見る方もショックでした。実の子供を孤児院に入れるなんて、親の心境は全く語られません。唯一ジニが孤児院の親友に語るには、新しいお母さんとの間にできた赤ちゃんに危害を加えたと誤解されたので、ここに連れてこられてしまったのかも知れないとのこと。そうだとしても、血の繋がった親のすることではないと思います。せめてジニが孤児院に連れてこられるに至ったエピソードを描いて欲しいと思いました。
 その後一緒にアメリカに行こうと固く約束した親友にも裏切られて、孤独になったジニは、可愛がっていた小鳥を埋めた場所を掘り返し、自らも「埋葬」しようとするシーンが衝撃的でした。辛いシーンが多い本作ですが、要所では、ユーモラスなエピソードもあり、暗いばかりの作品では、ありません。むしろ孤児院の子供たちは、新しい里親と出会って、自分の夢を叶えるのだという前向きの気持ちをもって過ごしているところが、見ている方の気持ちの救いとなりました。

 但し本作は、プロデューサーの急死によりラストの撮影が中断したため、ラストシーンがかなり急な終わり方になっているところが惜しまれます。ジニが飼っていた小鳥は死んでしまいましたが、ジニ自身は、気持ちを切り換えて、冬の孤児院を飛び立つ小鳥であって欲しかったです。その一番大切な心境の変化が、あまり描かれていなくて、唐突になってしまった部分は、もう少し掘り下げて欲しかったです。
 同じ孤児院を描くフランス映画『コーラス』もラストは、あっけなかったですが、音楽で感動できました。孤児院を舞台にした場合、最後の落し所は似てきます。それだけに一工夫は欲しいですね。

 なお、ソル・ギョングが、ジニの父親役でカメオで出演しているところも話題となりました。

流山の小地蔵