あの日、欲望の大地で : 新作映画評論

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映画

あの日、欲望の大地で

劇場公開日 2009年9月26日
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あの日、欲望の大地で 9月26日よりBunkamuraル・シネマ、銀座テアトルシネマにてロードショー

愛でもトラウマでもなく、躓いた人がやっと踏み出す未来への一歩

アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督の世界観をデビュー時から支えてきた脚本家、ギジェルモ・アリアガの監督デビュー作である。それゆえ本作でも現在と過去がパズルのように交錯し、ミステリーの様相を成している。しかしその思わせぶりな作り方が少しずるく見えたイニャリトゥ作品での脚本に対し、今回この構成でなければならない必然性を初めて見出すことができた。なぜなら主人公は過去に囚われながら現在を生きている人物だからだ。

風が通り過ぎていくだけの荒れた大地に、人知れず残された記憶の足跡。イニャリトゥ作品の大地のイメージは、このアリアガのもつイメージだったことがわかる。彼の作品の原点は大地の記憶なのだろう。本作では心まで乾いてしまうような枯れた土地で、孤独ゆえに愛を絶望的なまでに求めた母と娘が描かれる。しかし母親は愛ゆえに罪を背負い、主人公である娘は罪ゆえに愛を拒む。とくに10代の時の孤独な激しさ、純粋ゆえの残酷さを描いた部分に、彼は素晴らしい演出力を見せる。

最初、脚本家が監督になったときに生じる、脚本を正確に映像化しすぎる欠点を案じたが、意外にもアリアガはシネマな人であった。それを顕著に感じたのがラストシーンである。決して振り向かず、前に進んできた主人公が、初めて振り向く。すると背中にあった過去が、今度は未来になる。愛でもトラウマでもなく、躓いた人がやっと踏み出す未来への一歩、その瞬間を描くために彼はこの映画を撮ったのだ。

木村満里子

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