空気人形 : 新作映画評論

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空気人形

劇場公開日 2009年9月26日
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空気人形 9月26日よりシネマライズ、新宿バルト9ほかにてロードショー

ペ・ドゥナの肉体と全編のノイズに、性的な興奮をおぼえる愛の寓話

非人間的なるものが人間の心を持つという、「ピノキオ」の変奏が見られる物語だ。是枝裕和監督は、東京・下町のうらぶれた風景の中に(過食症の女などの)さまざまな俗物たちを配し、男性の性欲の捌け口となるペ・ドゥナが演じる“空気で膨らむ人形”の心の動きをすくいとっていく。フワフワした浮遊感が、このラブドールの肉体性を際立たせる。

注目すべきは、この人形が1体5980円の商品名「CANDY」という量産品だという点だ。人形師(オダギリジョー)によって人間そっくりに生命を吹き込まれた人形ではあるが、「ウォーリー」に登場するロボット、ウォーリーやイヴのように、社会学的に“代用品”にほかならないから、もの悲しいのだ。

映画表現的にも実にユニークな、映画史上もっとも美しいと思われるラブシーンがある。彼女がビニール皮膜にキズをつけ、全身から空気が抜けてしまったとき、店員の男(ARATA)が彼女のお腹の空気穴に息を入れて、見る見るうちに膨らませるのだ。荒々しくなった両者の吐息がいやらしくエロティックだ。

本作を豊穣な映画的世界に誘うのは、人間の吐息に始まり、風鈴の音色に終わる全編に響きわたるノイズだ。これは、ペ・ドゥナのぜい肉のない“スペクタクルな肉体”を獲得した是枝監督が現代に挑む愛の寓話だ。彼が夢想した性的なイマジネーションに、興奮した。

サトウムツオ

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ABOUT THE MOVIE

  • 空気人形 画像2 [拡大画像]
  • 空気人形
  • 女性の「代用品」として作られた空気人形ののぞみに、ある朝「心」が芽生え、持ち主の秀雄が留守の間に街へ繰り出すようになる。そんなある日、レンタルビデオ店で働く青年・純一に出会い、密かに想いを寄せるようになった彼女は、その店でアルバイトとして働くことになるが……。「誰も知らない」「歩いても 歩いても」の是枝裕和監督が、業田良家の短編漫画「ゴーダ哲学堂 空気人形」を映画化。主演は韓国の人気女優ペ・ドゥナ。
  • 監督・脚本・編集:
    是枝裕和
    製作:
    川城和実、重延浩、久松猛朗、豊島雅郎
    プロデューサー:
    浦谷年良、是枝裕和
    原作:
    業田良家
    撮影:
    リー・ピンビン
    美術:
    種田陽平
    音楽:
    World's end girlfriend
    出演:
    ペ・ドゥナARATA板尾創路高橋昌也余貴美子岩松了星野真里丸山智己奈良木未羽柄本佑寺島進オダギリジョー富司純子
    製作国:
    2009年日本映画
    上映時間:
    1時間56分
    配給:
    アスミック・エース
  • 9月26日よりシネマライズ、新宿バルト9ほかにてロードショー
  • オフィシャルサイト

(C)業田良家/小学館/2009「空気人形」製作委員会

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