ポー川のひかり : 新作映画評論

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ポー川のひかり

劇場公開日 2009年8月1日
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ポー川のひかり 8月1日より岩波ホールにてロードショー

触れ合うことの官能性をせつないまでに慈しむ、愛の寓話

ヨーロッパ最古のボローニャ大学の図書館で、大量の古文書が太い釘で床に貫かれるという事件が起きる。容疑者はすぐに、若い気鋭の哲学教授であることが判明する。彼は車を乗り捨て、ポー川の岸辺にある陋屋で隠者のような生活を始める。いつしか、周囲の古老たちは、彼を<キリストさま>と呼び始め、ワインを片手に親密な交流が生まれる。

何度もリフレインされる書物の<磔刑>を思わせる光景が衝撃的だ。それを<虐殺>と叫ぶ老司教と教授の問答から、書物に象徴される人類の叡智がもはや本源的な救済とはなりえぬこと。さらに、現在の世界を覆い尽す未曾有の経済危機や、宗教対立から生じた終末的なビジョンへの異議申し立てというメッセージが声高に謳われているかにも見える。だが、果たしてそうか。

教授がインドの女学生の手に触れながら「愛撫することに真実がある。あらゆる本のなかよりも」と呟くのが印象的だが、この映画は、画面いっぱいに広がる大気や植物のむせかえるような匂い、木漏れ陽の眩い美しさに、全身で反応することこそが大切なのではないか。夕闇迫る中、ポー川を船が通り過ぎていく。そこだけ夢のような明るさに満ちた船上で、踊っているカップルが見える。「フェリーニのアマルコルド」で霧の中から大型豪華客船が現れる感動的なシーンが思い出される。巨匠オルミは、苛烈な信仰批判という積年の主題に執着しながらも、触れ合うことの官能性をせつないまでに慈しむ、愛の寓話を紡ぎあげたのである。

高崎俊夫

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ABOUT THE MOVIE

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  • ポー川のひかり
  • 「木靴の樹」などで知られるイタリアの巨匠エルマンノ・オルミ監督が、自身の映画人生最後の長編劇映画として撮りあげた作品。夏期休暇中のボローニャ大学で、大量の古文書に釘が打ち込まれているのが発見された。容疑者として浮かび上がったのは、学年末の授業を最後に姿を消した若き哲学教授。全てを捨ててポー川上流にたどり着いた彼は、そこで見つけた廃屋で暮らし始める。牧歌的な風景の中で織りなされる教授と村人たちの交流を通し、人生の豊かさとは何かを問いかける人間ドラマ。
  • 原題:
    Cento Chiodi
    監督・原案・脚本:
    エルマンノ・オルミ
    製作:
    ルイジ・ムジーニ、ロベルト・チクット
    編集:
    パオロ・コッティニョーラ
    美術:
    ジュゼッペ・ピッロッタ
    音楽:
    ファビオ・バッキ
    出演:
    ラズ・デガンルーナ・ベンダンディアミナ・シエドミケーレ・ザッタラダミアーノ・スカイーニフランコ・アンドレアーニ
    製作国:
    2006年イタリア映画
    上映時間:
    1時間34分
    配給:
    クレストインターナショナル
  • 8月1日より岩波ホールにてロードショー
  • オフィシャルサイト

(C) 2006 cinema11unidici-Rai Cinema

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