劇場公開日 2020年1月17日

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「セカイ系にする意味がない」サマーウォーズ CRAFT BOXさんの映画レビュー(感想・評価)

2.5セカイ系にする意味がない

2014年10月31日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

楽しい

物語は、インターネット上の仮想空間が実社会と密に連携している世界で起きるハッキング事件を背景にし、テーマとしては、実社会での絆があってこそのバーチャルな世界の利便性であるべきだというところか。本作に登場する大家族や、終盤にインターネット上で交わされる大勢の交流=絆みたいなものを描いていると解釈するべきなのだろう。

さて、本作はSFファンタジーのような世界で展開する訳だが、そのSF的な要素には何一つ目新しさは無い。むしろ、この仮想空間の描き方はかなり雑な設定しか提示されていないので、イクラでも突っ込むことができてしまう。まぁ、それは制作者の意図としてあえて大雑把な概念しか提示していないのだろうが、だとしたら現実社会の方にリアリティがあるかといえば、何だかこの家族にも全くリアリティがない。
いわゆる「セカイ系」の作風ではあるが、セカイ系には主人公半径10メートルくらい描写に何らかの共感できるようなリアリティと、それとは相反するようなスケールの大きな世界的事件が共存するからこそ面白い訳だが、主人公の半径10メートルに起こる出来事も、世界的な事件も、どちらも共感できるような世界観が構築されていない。むしろ、無理矢理セカイ系にしないで、細谷監督には、真っ正面から家族や絆をテーマにした作品を作って欲しかった気がする。

もう一つ難点を言うと、人物描写が薄っぺら過ぎる。栄おばーさんだけは魅力を感じられ、主人公の一人である健二は何とかキャラが立っていたが、もう一人の主人公である夏希に至っては魅力あるキャラクターとしてまったく描かれていない。単に花札のコイコイが強いってだけだ。侘助なども重要なキャラなのに、全く薄っぺらい。同級生の敬は、なぜか常に絶対安全な状況にあるようで、俯瞰して状況判断できているがとくに説明は無い。他の登場人物もまた、それぞれ一応の設定があるのに、ほとんどモブ扱いに過ぎない。

まぁ、『時をかける少女』で大林宣彦に喧嘩を売り、本作の次に作った『おおかみこどもの雨と雪』で宮崎駿に喧嘩を売った細田監督なので、本作は押井守と庵野秀明に対してまとめて喧嘩を売ってるのかもしれない。それならそれで構わないが、この程度で勝負を挑んでも、勝負になってない。
細田監督作品としては凡作だ。

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