フロスト×ニクソン : 新作映画評論

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映画

フロスト×ニクソン

劇場公開日 2009年3月28日
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フロスト×ニクソン 3月28日よりTOHOシネマズシャンテほかにてロードショー

善悪二元論からの脱却を図る“今のアメリカ”を感じさせる一作

なんでもバラエティ化してしまうこの国のTVでは、とんと見なくなったが、真剣勝負のインタビューは、対象から本音を引き出す場であると同時に、取材者の力量をさらけ出す場にもなる。勝敗を決するのは、視聴者が受ける印象のみ。復帰を目論む失脚した元大統領ニクソンと、成り上がりを賭けた司会者フロストの静かなる決闘。結果は、ニクソンが自らを決定的な破滅に追いやった番組として語り継がれる。しかし、あきらかに本作の作り手たちは、当時の視聴者が受けた印象とは異なる着地点へと導いていく。

4回に及んだインタビューの序盤戦、老獪な大物政治家は、準備も力量も不足していた小物エンターテイナーを圧倒し続ける。相手の動揺を誘うニクソンの、小ざかしい駆け引きは絶妙。追い込まれたフロストは、ブレーンの力を借りて形勢逆転のチャンスを得る。狼狽と失言によって世紀の悪党は本性を現すのだが、そのプロセスを通し、彼に憐れみさえ覚えてくる。それはフランク・ランジェラという俳優の凄味に他ならない。外見上ニクソンに似ているとはいえないこの役者は、闇を抱えた魅力的なキャラクターを作り上げてしまった。

勝ったのはフロストだろうか。いや、弱点を覆い隠すために策を弄し続けた怪物が、TVカメラの魔力の前で丸裸にされ、人間性を垣間見せた結果にすぎない――。ただ単に悪のレッテルを貼るのではなく、そう実感させて二元論から脱却する術を、アメリカは模索しているようでもある。

清水節

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