運命のボタン : 映画評論・批評

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運命のボタン

劇場公開日 2010年5月8日
2010年4月27日更新 2010年5月8日よりTOHOシネマズみゆき座ほかにてロードショー

傑作短編を“恐怖メロドラマ”へと変容させた若き鬼才の無謀な挑戦

「そのボタンを押せば100万ドル差し上げます。ただし、あなたの見知らぬ誰かがひとり死にますが」。ある日突然、そんな怪しげな“選択”を迫られる若夫婦の物語。リチャード・マシスンの原作「死を招くボタン・ゲーム」は10分で読みきれるほどの短編で、あらゆる要素が謎のまま伏せられている。こうした道徳的教訓を含む寓話はシンプルで謎めいているほど、読者の想像力をかき立てるというものだ。

映像化するなら30分が適切であろうこの企画の無謀ともいえる“長編”化に挑んだリチャード・ケリー監督は、1970年代のNASAの宇宙開発計画を背景に、ホラーかSFか、不条理劇かと思わせる異色作に仕上げた。さまざまな映画的記憶を喚起するケリーの妄想炸裂演出は、マニア的な面白さは満載だが、簡潔で懐の深い原作の妙味が損なわれた面も否めない。

とはいえこの映画には、捨てがたい魅惑がある。顔の半分が欠損したスチュワード氏(フランク・ランジェラ!)のギョッとするほど不気味な風貌。その怪紳士の誘惑に抗えず、運命のボタンを押してしまうヒロインは、少女時代の医療事故で片足の指が失われているという設定だ。やがて物語が進むうちに、ヒロインは金目当ての欲望に負けたのではなく、何か別の衝動に突き動かされてボタンを押したように思えてくる。その“何か”の答えは正直よくわからない。しかし筆者には、はかなげで切ない情感を帯びたこの映画の登場人物たちが、欠落した“何か”を埋めようとして恐ろしい悲劇に堕ちていったように思えてならない。そう、これは破滅的な“恐怖メロドラマ”なのだ。

高橋諭治

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