グラン・トリノ : 新作映画評論

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グラン・トリノ

劇場公開日 2009年4月25日
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グラン・トリノ 4月25日より丸の内ピカデリーほかにてロードショー

気骨と笑いと長い余韻が、イーストウッドの図抜けた器量を物語る

「グラン・トリノ」は7つの顔を持つのかもしれない。映画を見てかなり経ってから、私は妙な感想を抱いた。妙というより、面妖とか奇怪とか言い換えたほうがよいだろうか。

私は試写室で、終映後に力いっぱい拍手をしている人を見かけた。泣けて泣けてたまらなかったという人もいたし、くすくす笑いが止まらなかったという人もいた。俳優イーストウッドの集大成、との声は高かったし、台詞の楽しさを堪能したという感想もしばしば耳にした。B級テイストを全開させた佳作と指摘する人の隣では、「究極のスター映画」という見方も出ていたはずだ。

いま挙げた意見は、それぞれに当を得ている。大泣きしたという声を聞くと、「イーストウッド最後の出演作」という触れ込みに惑わされたのではないかといぶかしんでしまうが、情感の深さを思えば、これとて許容範囲に属するような気がする。

ご承知のとおり、話の枠は「渋茶老人の戦い」だ。朝鮮戦争に行き、フォードの工場で働き、いまは年金暮らしをしている老人が、ラオスから来たモン族の少年と出会い、風変わりな友情を温めていく。そんな平和をかき乱す集団が……というのがおおよその筋書だが、ここでイーストウッドは、映画の軸に「ブルーカラーの気骨と笑い」を据える。

この太い線が強力だ。気骨を示し、笑いのさざ波を広げる技にはさすがに年季が入っている。しかもイーストウッドは、さくっと撮られた映画の楽しみを観客に手渡しつつ、「男の肖像」をディープに彫り上げてみせる。多面体を思わせる映画の横顔と、話のサイズには不似合いなほど長い余韻が、イーストウッドの図抜けた器量を物語っている。

芝山幹郎

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