劇場公開日 2008年12月20日

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英国王給仕人に乾杯! : 映画評論・批評

2008年12月9日更新

2008年12月20日よりシャンテシネにてロードショー

麗しい映像と音が溢れている世界平和のための一本

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この映画の軽やかさと優雅さについてあれこれ書くよりもネット上にある予告編を見せればそれで十分、そんなことでも言って書くことを放棄してしまいたくなるような麗しい映像と音が溢れている。麗しすぎて、馬鹿みたいに思えるほどだ。未だ世界中のそこかしこで戦闘が行われ自爆テロがあり、餓死する人々もいて、経済は一気に下り坂、しかし一方で華やかに暮らし続けるセレブたちもいる。そんな二極化した現代社会においてこの麗しい映画を見ることは贅沢極まりないことであると同時に、なんとも呑気でバカヤロウな行為でもあるだろう。

しかしである。よく見ていただきたい。この映画に映る第2次大戦前後のチェコの社会もまた、勝ち組と負け組にはっきりと分かれているではないか。持つ者と持たざる者とが対峙し、混ざり合い、時にそれが入れ替わる。まさに現代社会そのものと言えるような風景が広がり、しかしその対峙と入れ替わりのバランスがまるでミュージカル映画のように語られていくユーモアこそが、この世界をひとつにまとめる。服を着た人間も裸の人間もハンディキャップのある人もない人も闘う人も闘わぬ人も、一本の映画という壮大なフィクションの中で儚く淡い夢のような存在となる。この現実の危うさと脆さ、人生のつかの間の時間が、この映画の中で永遠の夢を見ているかのようだ。世界平和のための一本。

樋口泰人

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