劇場公開日 2008年12月20日

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永遠のこどもたち : 特集

2008年12月15日更新

パンズ・ラビリンス」のギレルモ・デル・トロがプロデュースした感動のスピリチュアル・ドラマ「永遠のこどもたち」が12月20日より公開となる。かつて孤児院だった洋館で、ある日、子供が姿を消してしまった母親が、わが子を探し出すために自分の信じた道を貫く姿を描く本作は、一見するとミステリアスだが、雰囲気だけで終わらない不思議な魅力に満ちている。そんな本作の見どころを分析してみる。また、特別映像も配信しているので、その映像世界を確認してほしい。(文・構成:平田祐介)

デル・トロ的世界観で母子愛を描く意欲作「永遠のこどもたち」を見る

アカデミー外国語映画賞のスペイン代表にもなった秀作
アカデミー外国語映画賞のスペイン代表にもなった秀作

■ギレルモ・デル・トロ製作による幻想的な映像世界

息子の姿が消えた孤児院に隠された秘密とは…?
息子の姿が消えた孤児院に隠された秘密とは…?

おどろおどろしいなかにも美しさを秘めた映像、古今東西の伝説と神話を融合させたかのような世界観。その唯一無二のスタイルで世界中の映画ファンを魅了してやまないのが、アカデミー賞3部門受賞に輝いた「パンズ・ラビリンス」や公開が迫る「ヘルボーイ/ゴールデン・アーミー」のギレルモ・デル・トロ監督。そんな鬼才がプロデュースを手がけたのが、本国スペインでメガヒットを記録し、カンヌ国際映画祭やゴヤ賞といった世界の名だたる映画祭、映画賞で絶賛を集めた「永遠のこどもたち」である。

自分が育った海辺の孤児院を買い取り、夫のカルロス、息子のシモンと移り住んだラウラ。障害を抱える子供たちのための施設としてそこを再建しようとするなか、広い屋敷のなかでシモンが空想上の友人トマスと遊ぶように。最初は気に留めていなかったラウラだったが、トマスの似顔絵を描いたり、実際に存在しているかのような遊びにふけったりと、シモンと彼の奇妙な関係は徐々にエスカレートしていく。そして、施設オープン・パーティーの日、シモンが謎の失踪を遂げてしまう。必死になって我が子の行方を捜すラウラは、屋敷に秘められた忌まわしい過去を知ることに。

美しい風景や映像に引き込まれていく
美しい風景や映像に引き込まれていく

ミステリアスな展開に加えて、随所でハッとさせられるのが数々のビジュアル。

真っ白な砂浜の向こうにそびえ立つ灯台、逆光を浴びたステンドグラス、青く輝く芝生の上で遊びに興じる子供たち、そして海辺の洞窟にボンヤリと見え隠れする愛息シモンらしき人影、不気味な布製マスクを被って屋敷の廊下に佇立する少年……。監督を務めるのはスペインの俊英J・A・バヨナだが、その絵画のような美しさと悪夢のような恐ろしさが混在した映像は、製作者であるデル・トロの影響が大きく反映されているといっていいだろう。

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■スピリチュアルなムードに母子の絆が余韻を残す、濃密なドラマ

母としての深い愛情が、思いがけない感動のラストへ導く
母としての深い愛情が、思いがけない感動のラストへ導く

さらに、観る者の胸を強く突き動かしてやまないのが、母ラウラとその子供シモンの揺るぎない愛情や絆を描いたストーリー。突如として姿を消し、半年という時間が経過するにつれて夫や警察からも安否を絶望視されてしまうシモン。そんな状況のなかで、たったひとりだけで懸命に彼を追い続けながら、30年前に屋敷で起きた凄惨な出来事、頻発する怪現象と対峙するラウラ。その果てに迎える、切なくて感動的なラストは鑑賞後に強い余韻を残すことだろう。また、主演を務めた「海を飛ぶ夢」「美しすぎる母」などで知られるスペインの実力派女優、ベレン・ルエダの存在も見逃せない。撮影中に8キロもの減量を敢行し、さまざまな葛藤や不安にさらされるラウラの複雑な内面を見事なまでに体現した彼女の熱演が、作品にただならぬ緊張感と奥行きを与えている。

ニコール・キッドマン主演の「アザーズ」やM・ナイト・シャマラン監督による「シックス・センス」にも通じる、スピリチュアルなムードと濃密なドラマが巧みに絡み合った珠玉の一品だ。

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