それでも恋するバルセロナ : 新作映画評論

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それでも恋するバルセロナ

劇場公開日 2009年6月27日
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それでも恋するバルセロナ 6月27日より丸の内ピカデリーほかにてロードショー

ルビッチとロメールを融合させて色恋沙汰のねじれや反転をたっぷりと描く

恋愛はややこしい。三角関係はもっとややこしい。四角関係になるとさらに……といいたいところだが、意外にも、ここまで来るとガスの抜けることがある。事情は、よじりすぎた紐が真っ直ぐな紐に見えてしまうのと似ているかもしれない。もちろん、一本の真っ直ぐな紐は二度と戻ってこないのだが。

ウッディ・アレンの新作「それでも恋するバルセロナ」には、色恋沙汰のねじれや反転やジグザグがたっぷり詰まっている。とはいえ、この映画は一度たりとも重くならない。アレン持ち前の苦みや渋みを話の急所で生かしつつ、語りのペースはけっして停滞しないのだ。

アレンはまず、最初に用意された3枚のカードで意外な手を作ってみせる。観客はここで笑い、そのあとちょっと肝を冷やす。が、話が煮詰まったり嫌なこじれ方をしたりする前に、アレンはもう1枚強力なワイルドカードを切って事態を急展開させるのだ。

映画はここからにわかに豊饒さを増す。当初はハビエル・バルデムをめぐる「ひと夏の三角関係」を描いた話にすぎなかったのに、中盤からは「当事者が大変になればなるほど、傍から見る者はおかしくてたまらなくなる」という色恋沙汰の憲法第一条が、手を替え品を替えて描き出されるのだ。

4人の俳優も、アレンのカードさばきに応える。というより、アレンは彼らにカードを超えるよう要求する。すると4人は、夏のバルセロナというエロティックな空気を身にまとい、色恋の楽しさや愚かさや情けなさを体現して、画面のなかで躍動しはじめるのだ。まさに熟練の演出ではないか。ルビッチの奸智とロメールの風流を融合させられる監督は、今年74歳のアレンをおいていない。

芝山幹郎

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