劇場公開日 2010年12月11日

「うすっぺら」ノルウェイの森 eiggaxさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0うすっぺら

2011年5月7日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

単純

心象描写のうすっぺらさを映像美で補った作品。ロケ地や昭和のセットはとにかく美しいが、そこにこだわりすぎて内容まで手が回らなかったのか、展開はつまらなく、鑑賞後に何も残らない。これで菊池凛子が出てなかったら本当にどうしようもない出来だったと思う。
松ケンは嫌いではないが、ワタナベの感情のうつろいをうまく表現出来ていない。一番の見せ場である、直子の死を知った時の落胆シーンがいまいちだったのが痛い。序盤からその一瞬に向けてのワタナベの心の揺れ動きをうまく描けていないから、最後の「僕はどこに居るんだろう」の台詞が生きてこない。

直子の最期のショットは直接的過ぎて映画の質を落としている。ストーリーを描く力が監督に無いからあんなシーンを挿入するしかなかったんだと思う。

登場人物の生活描写が薄い割りにはミドリのバックグラウンドだけ描かれているのも片手落ち。水原希子は台詞まわしがギャル語で語尾がはっきりせずぼそぼそしていて聴きづらい。こういう喋り方をする人はムカつくので映画に出て欲しくない。

まぁ若手起用の撮りとしてはそこそこ成功しているんだろうが、名作とは程遠い。原作の力と菊池凛子の狂気ぶりに救われた作品。細野、高橋、糸井をチョイ役で出した意図は不明。フジがバックにつくと大抵こういう映像の美しさだけに頼った、一見名作風にしてしまうところがおもしろくない。

eiggax