劇場公開日 2008年12月27日

「映画史に残る美しいラストシーン」そして、私たちは愛に帰る k.moriさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0映画史に残る美しいラストシーン

2010年8月14日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

泣ける

悲しい

知的

多少ネタバレありです。

トルコ人の娼婦を老後の伴侶にしようとする、一人のドイツ人の老人。結果老人に殺されてしまう娼婦。左翼活動で、トルコから国外に逃亡するその娼婦の娘。その娘を愛し、助けようとするが結果殺されてしまうドイツ人女学生。これらの人間関係がしだいにイスタンブール/トルコを目指してひとつに集約していく。

はじめは、ありがちな、面白くもないストーリーだと思い、ドイツ人女学生のお人好しぶりと無用心さに苛立ちを覚えつつ観ていたのだが、終盤、加害者(娼婦の娘-間接的加害者)と被害者(ドイツ人女学生の母親)が和解するシーンを経る事でこれまでの全てのストーリーが、深みと重みを持ち始めた。作品前半を覆う東ヨーロッパ的な暗さや憂鬱さや単調さのようなテイストが、終盤になり急に温かみを増してゆき、その温かさとトルコの風土が美しく重なっていく。

ラスト、殺人者になってしまった老人(父親)に会いにゆく、その息子。

この映画のラストシーンは非常に美しく、映画史に残る名シーンといってもいい。
これほど、”雰囲気”のあるラストシーンは珍しい。ラストだけとってもこの映画を観る価値はあると思う。

ヨーロッパ地域の複雑で激しい社会的、文化的、宗教的土壌ゆえにできあがった名画である。

k.mori