劇場公開日 2009年1月24日

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「2009年必見映画」レボリューショナリー・ロード 燃え尽きるまで antさんの映画レビュー(感想・評価)

5.02009年必見映画

2009年5月31日
鑑賞方法:映画館

悲しい

怖い

「撮影:ロジャー・ディーキンス」の映像が素晴らしい。古い時代を意識させながらも柔らかな光の加減の見事さは、暗黒の20年代LAを表現するのにべたっと青くしてしまった『チェンジリング』と比べてほしい。その一方で風俗描写も50年代を表現しながら、今から見ても違和感がないように工夫されている。50年代を語りながら現代に通じるテーマを扱っているからだ。

監督夫人が主演しているとは思えないほどに辛らつな夫婦関係を描く(冒頭の素人女優ぶりはもう少し露骨でもよかったかも)。夫婦の言い争いの様子は一見理想的に見える50年代家庭の裏にある成熟していない大人たちの姿を暴いている。これが子供たちにいい影響を与えるわけもない(ここで「めぐりあう時間たち」のリッチーの末路を思い出す)。

そんな夫婦の空虚さを指摘するのが不動産屋の精神を病んでいる息子(マイケル・シャノン)だ。彼がずばずばと問題点をあげる様子は短いながらも印象的だ。しかし夫婦としてうまくやるためには不動産夫婦のようにある程度は目をつむる必要があるわけだ。

さて50年代直後に書かれた小説を今映画化する意味はどこにあるのか?アメリカ社会が大きく変化した60年代の前、50年代こそが理想的な社会だとする人たちに対するしっぺ返しだ。この時代に赤狩りがあり、映画界も大きく揺れた。この映画でレオナルド・ディカプリオの不倫相手はゾエ・カザン、エリア・カザンの孫で映画製作者がその辺を意識していないはずがない。今の映画界がニュー・シネマからの一連の流れを肯定するためには50年代が単純に明るいだけの世界ではないとしないとだめなのだ。その意味では郊外の問題を扱ってきた監督と女優によって、今作らなければならない映画なのだが、あまり受けていないようなので、時期を間違ったのかもしれない。

ant