正義のゆくえ/I.C.E.特別捜査官 : 新作映画評論

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映画

正義のゆくえ/I.C.E.特別捜査官

劇場公開日 2009年9月19日
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正義のゆくえ/I.C.E.特別捜査官 9月19日よりTOHOシネマズシャンテほかにてロードショー

南アフリカ出身監督が描く超大国アメリカの脆弱な実態

9・11以降のアメリカは理不尽なくらい排他的な国になってしまった。自らも南アフリカ出身で苦労して米国市民権を取得した経験があるウェイン・クラマーの脚本&監督作だけあって、「正義のゆくえ/I.C.E.特別捜査官」で描かれる当局の不法滞在者に対する締め付けは、むしろそっちの方が犯罪的ですらある。

幼い息子を残してメキシコに強制送還される母親や、移民判定官と寝る代わりに偽造グリーンカードを入手しようとする女優志願のオーストラリア人女性等は、貧困や夢の実現が動機の越境者たちだ。しかし、同時多発テロ以降のアメリカが最も排除したいのは危険なイデオロギーの持ち主、つまり、彼らから見ればテロリストの根を持った外国人であることが、あるエピソードで明らかにされる。敬虔なイスラム教徒であるバングラデシュ出身の女子高生、タズリマは、授業で9・11のテロ実行犯たちを殺人鬼と決めつけるべきではないと言い放ったばっかりに、危険分子と見なされ拘置されてしまう。そればかりか、FBIは少女に自主退去か裁判闘争か一家離散かの三者択一を迫るのだ。もはや、そこには言論の自由、人間の尊厳さえ保証されない、恐怖に屈した大国の脆弱な実態が露になって、重い脱力感が漂うばかりである。

ハリソン・フォードが初めて群像劇の一部となって演じる移民税関捜査官が、メキシコ人の少年を故郷に送り届ける幕切れに、かすかな光明を見出すと言ったら楽観的に過ぎるだろうか? 少なくとも、恐怖を封印するために最も有効な手段は、ささやかな善意と勇気をこつこつと積み重ねて行くこと。その向こうに“正義のゆくえ”があるのだと思う。

清藤秀人

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