ディア・ドクター : 新作映画評論

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映画

ディア・ドクター

劇場公開日 2009年6月27日
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ディア・ドクター 6月27日よりシネカノン有楽町1丁目ほかにてロードショー

何かになりすまして生きている現代人の不安を、鶴瓶が体現

「村の外れに脱ぎ捨てられた白衣」の理由をひもとくように語り始めるこの物語は、ニセ医者と彼を必要とした村人たちとの蜜月関係が温かくユーモラスだ。モチーフは僻地医療の現実。しかし、西川美和の過去作「蛇イチゴ」「ゆれる」同様、嘘と誠、善意と悪意をめぐって揺れ動くテーマは一貫し、可笑しくも哀しい人間の本性がさらに露わになっていく。村人の総意を受けて変容する鵺のような鶴瓶の造形はもとより、陰に陽に彼を支える余貴美子が見事。特筆すべきは、自立した子を気遣う病身の母・八千草薫と、医師でありながら拒絶され屈折する娘・井川遥との間に流れる空気。抑制された演技が醸す普遍的な家族像の表現が抜きん出ている。

本作への共感の分かれ道は、生きづらく複雑な社会で所詮自分は何者かになりすましているに過ぎないという不安感に、どれほどさいなまれているか否か。かく言う筆者も、西川美和という傑出した才能に批評を加える行為なんておこがましいのではないかと硬直する瞬間がある。曖昧な自己は、人様や世間と繋がることで初めて形を成す。ホンモノかニセモノか。それは免許や資格という紙切れではなく、周囲からの期待や信頼でこそ決定づけられるのだ。西川作品とは、日本人の原風景が広がる田舎へと連れ出し、身にまとう最後の衣までも脱ぎ捨てさせ、心の扉を開かせる“仮の診療所”かもしれない。「どうしたい?」と問いかけ、患者の意向で処方箋は決まる。観る者に応じて表情を変えるラストカットは、ふくよかな解釈を与えることだろう。

清水節

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ABOUT THE MOVIE

  • ディア・ドクター 画像2 [拡大画像]
  • ディア・ドクター
  • 「蛇イチゴ」「ゆれる」の西川美和監督が、笑福亭鶴瓶を主演に迎え、僻地医療を題材に描いたヒューマンドラマ。都会の医大を出た若い研修医・相馬が赴任してきた山間の僻村には、中年医師の伊野がいるのみ。高血圧、心臓蘇生、痴呆老人の話し相手まで一手に引きうける伊野は村人から大きな信頼を寄せられていたが、ある日、かづ子という独り暮らしの未亡人から頼まれた嘘を突き通すことにしたことから、伊野自身が抱えいたある秘密が明らかになっていく……。
  • 監督・原作・脚本:
    西川美和
    製作:
    川城和実、重延浩、島本雄二、久松猛朗、千佐隆智、喜多埜裕明
    プロデューサー:
    加藤悦弘
    撮影:
    柳島克己
    美術:
    三ツ松けいこ
    編集:
    宮島竜治
    音楽:
    モアリズム
    出演:
    笑福亭鶴瓶瑛太余貴美子松重豊岩松了笹野高史井川遥高橋昌也中村勘三郎香川照之八千草薫
    製作国:
    2009年日本映画
    上映時間:
    2時間7分
    配給:
    エンジンフイルム、アスミック・エース
  • 6月27日よりシネカノン有楽町1丁目ほかにてロードショー
  • オフィシャルサイト

(C)2009「Dear Doctor」製作委員会

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