劇場公開日 2008年8月16日

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「荒廃していく心」この自由な世界で Cape Godさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0荒廃していく心

2013年3月4日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

難しい

総合:80点
ストーリー: 80
キャスト: 85
演出: 85
ビジュアル: 70
音楽: 70

 日本でも貧困ビジネスが問題になっているが、この映画も真面目に社会問題を扱った作品である。だが一方的な見方をして結論ありきで語るのではなく、登場人物の立場と経緯を描いて視聴者に考えさせる。

 弱者を食い物にして金を稼ぐ。強いものが弱いものを食い物にして、弱いものはさらに弱いものを食い物にしていく。その過程は人々の不満を高め憎しみを呼び不幸の連鎖を招く。主人公のアンジーにしても最初は被害者に過ぎなかった。だが彼女はいつのまにか加害者となって憎しみを受ける側となり、本来味方であるものからすら見放された。負の連鎖を容赦なく見せつけ、社会も人の心も荒廃していくさまを描ききる。誰かを悪者にするのではなく、ありのままを見せる。たいして金もかかっていなさそうな映画だが、その演出と表現はかなり質が高い。
 全く知らない出演者ばかりだが、みんな演技力もよい。特にキルストン・ウェアリング演じる主演のアンジーは、勝気で努力家の起業家を熱演していて素晴らしい。不当な解雇にも負けず精一杯虚勢を張って強気に自分で道を切り開こうとする姿勢には、当初は一人のヒロインとしての共感すら覚えた。だけど追い詰められて本人も知らないうちに変わっていって、ビジネスとして軌道に乗り始めても人として精神的に荒れていって落ちていく姿がまた鬼気迫る。

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Cape God