劇場公開日 2008年9月27日

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コドモのコドモ : 映画評論・批評

2008年9月24日更新

2008年9月27日よりシネ・アミューズ、新宿武蔵野館ほかにてロードショー

オトナの皆さん、コドモが大変なことになってます!

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小学5年生のコドモがコドモを産む。女子高生が主人公の「JUNO/ジュノ」は愉快な青春映画だったが、こちらはおいそれと笑い飛ばせる設定ではない。リアルに描くには際どすぎる題材だし、現実味の乏しいファンタジーにしたら作る意味が疑われてしまう。「神童」の萩生田宏治監督、ずいぶんハードルの高い企画に挑んだものだ。

ところが映画が始まると筆者はそんなことを忘れ、ハラハラさせられっぱなしだった。ある春の日、遊び心で同級生との子を妊娠した主人公、春菜の行く末もさることながら、周囲の大人たちの描写に心がざわついたのだ。例えば、春菜の腹が膨らんだ夏のパートには、母親がそれに気づいたような素ぶりを見せる微妙な一瞬がある。しかし何事もなかったように映画は進む。もっと心配なのは担任の先生だ。彼女は性教育に熱心だが児童の心を掴めず、目前の現実に対処できない。田舎の風景も映像のリズムも実におっとりとした作品だが、登場人物が皆いったいどうなるのかという“サスペンス”が一貫して保たれている。

その緊張感がマックスに達するのは冬の出産シーンだが、ちょっと前まで人が人を産むことをグロとかエロと叫んでいた子供たちのひたむきな奮闘ぶりは頼もしくすら映る。むしろ常識や道徳に囚われ、物事を一面的に捉えがちなオトナのほうが“柔らかさ”を求められる事態なのだ。子供たちが小さなヒロインの大きなお腹に耳を寄せるシーンも愛おしいこの映画は、そっと控えめに、しかし確実に私たちオトナの心を揺さぶってくる。

高橋諭治

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