劇場公開日 2008年9月20日

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ウォンテッド : インタビュー

2008年9月11日更新

ロシアの人気ダーク・ファンタジーを映画化したVFXアクション「ナイト・ウォッチ」「デイ・ウォッチ」の斬新なビジュアルで注目を集めたティムール・ベクマンベトフ監督は、本作でも過激で斬新な映像をしっかり披露。その映像は一体どのようにして生まれるのだろう? その秘密を探るべく、来日した監督にインタビューを試みた。(取材・文:編集部)

ティムール・ベクマンベトフ監督 インタビュー
「脚本にいいアクションシーンがあることはまずない。それを創るのも監督の仕事だ」

斬新な映像を作り上げる監督の素顔は?
斬新な映像を作り上げる監督の素顔は?

監督は旧ソ連・カザフスタン出身のアジア系風貌。その過激な作風とは対照的な穏やかな笑顔。声は決して大きすぎないが、話す内容は確信に充ちている。

言葉では表現が難しいアクションが満載
言葉では表現が難しいアクションが満載

彼の映像創りの秘密のひとつは、映画の製作プロセスにある。ベクマンベトフ監督は、脚本にはないアクション・シーンを自分で考え出す。そのシーンのイメージをアニメで製作し、それを脚本に落とし込む。

「実際、脚本にはいいアクション・シーンがないことがほとんどなんだ。でもそれは当然だと思うよ、動きを文字で表現することは難しいから。だから、その物語に相応しいシーンは僕が自分で考える。そして、そのシーンをアニメで作ってみんなに伝える。それを脚本に書き加えてもらうんだ。脚本と監督の関係は、ダンスの振り付けと実際のダンスとの関係に似てると思う。振り付けはあっても、実際のダンスはダンサー自身が生み出す。それを同じように監督は欲しいシーンを自分で生み出すんだ」

その製作方法で創出された斬新な映像が魅力だが、監督が「マトリックス」3部作で好きなのは第1作のみ。昨今の派手なだけのアクション映画には興味がないという。

「ああいう映画はお金を払って見る気にはならないよ。テーマのないアクション映画にはまったく興味がないんだ」

本作の主人公ウェスリーも様々な“選択”を迫られる
本作の主人公ウェスリーも様々な“選択”を迫られる

そんなベクマンベトフが監督になることを決意したのは、「ひきしお」などで知られる1928年生まれのイタリア監督マルコ・フェレーリの「デリンジャー・イズ・デッド(原題)」(69・日本未公開)を見たとき。

「この映画は、極端に言うと、ひとりの男とひとつの部屋だけで描かれた映画なんだ。ひとりの男が自宅で食事を作る描写が延々と続くんだけど、最後に男が妻を殺して全く別の人生を歩いていくことになる。つまり、最小限の登場人物と舞台で、ものすごく大きな精神の動きを描いた映画なんだ。そこに感動した。映画はそういう表現が出来るんだ」

そして監督自身にも、この映画の主人公と共通するものがある。

「この主人公みたいに、自分の持っている物を全部捨てて新しい一歩を歩き始めるというのが好きなんだ。映画作りでも、いつも自分の知っていることを全部捨てて、新しいことをやりたいと思ってる」

過激な映像とは裏腹に 穏やかな見た目のベクマンベトフ監督
過激な映像とは裏腹に 穏やかな見た目のベクマンベトフ監督

ナイト・ウォッチ」「デイ・ウォッチ」のファンには、3部作最終章「トワイライト・ウォッチ」の行方も気になるが……。

「『ウォンテッド』が僕にとっての『トワイライト・ウォッチ』だ。『ナイト~』と『デイ~』の2作はあれで完結していて、『トワイライト~』は、あの世界をハリウッド映画的手法で描こうと考えていたんだ。僕が『トワイライト~』でやりたいと思っていたことは、すべて『ウォンテッド』でやれた。ストーリーは違うけど、テーマは同じだしね。どちらも自由と責任について、それをどのように選択するかについて描いている」

ウォンテッド」の続編については「やるよ!」ときっぱり答える監督だが、DCコミックスのロシア人スーパーヒーロー、レッド・スターの映画化企画も進行中。

「『スター・ウォーズ』と『ドクトル・ジバゴ』を融合させたような映画だ。新しいタイプのマーシャル・アーツ映画になるよ」

どんな世界を見せてくれるのか期待大だ。

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