劇場公開日 2008年12月6日

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252 生存者あり : インタビュー

2008年12月1日更新

第3回目は、本作のメガホンを取った水田伸生監督のインタビューをお届け。災害現場という極限状況に置かれた人々のドラマを壮大なスケールで描き出した監督が、リアルを追求した製作の裏側について語る。(取材・文:編集部)

第1回:伊藤英明&内野聖陽インタビューはこちら
第2回:MINJIインタビューはこちら

第3回:水田伸生監督 インタビュー
「一見するとパニック映画だが、我々がやりたかったのは人間ドラマ」

撮影現場での水田監督。壮大なスケールの映画を完成させた心境は?
撮影現場での水田監督。壮大なスケールの映画を完成させた心境は?

――もともとは、「海猿」原案者の小森陽一さんが書いた10枚ほどのプロットだったそうですが、脚本はどのように作られたのですか?

ハイパーレスキュー隊の男が閉じ込められる …という設定はプロット段階から変わらず
ハイパーレスキュー隊の男が閉じ込められる …という設定はプロット段階から変わらず

「当初のプロットは、ハイパーレスキュー隊の男が閉じ込められる設定以外はすべて違います。映画化にあたり、シナリオを書かせてほしいという小森さんの希望があったので、まずは一度書いてもらいました。さすがに第1稿では完成版のようなシナリオにはならなかったので、そこに斉藤ひろしさんというシナリオライターが参加して、最終的には僕が書き上げました。約1年かけてプロデューサー2人、斉藤さん、小森さんと僕の5人で仕上げたのですが、実は途中でかなり回り道をしています。国際戦争で核爆発が起こるストーリーにしようとしたりね(笑)。というのも、実際に“地中核”という地中で爆発する核爆弾が開発されているので、そのアイデアが使えると思ったんです」

――地中核にするか水害にするかで迷っていたのですか?

ハードな映画を完成させた 水田監督自身は気さくでユニーク
ハードな映画を完成させた 水田監督自身は気さくでユニーク

「地中核のアイデアを出したときに、周りも『映画的で面白い』と乗り気だったんです。それで途中までストーリーを詰めていったんですが、これだと人が助かるかどうかよりも国対国の戦争の方が気になるだろう、という単純なことに気づいたんです(笑)。そもそも映像表現は画で魅せなければいけないと思い、台風のアイデアが浮かびました。日本人にとって、台風はしょっちゅう上陸するからあまり危機感がないけど、案外恐いことなんじゃないかと思ったんです。それと同時に“台風の目”の存在はタイム・サスペンスとして使えますからね」

――映画化にあたり、台風やそれを予測する気象庁について、ハイパーレスキュー隊について事前にどんなことをリサーチしましたか?

「まずは、台風が今後どれぐらいの規模で大型化するのかを気象庁の方に取材しました。地球温暖化に伴い、映画で描いた高潮は十分起こりうることなんです。もちろん数年後に必ず起こるというような話ではないですけどね。また、雹が降るというのも、確かに台風の前触れなんです。実際にソフトボール大の雹が八王子で観測されていますからね。あとは竜巻についても調べました。

これらの気象庁の考えを基に、次は消防庁の方々にお話を伺いました。この作品で描くのは“高潮で地下鉄内に閉じ込められる”ことなので、この辺りが臨海都市だということを考えると、銀座線、東西線、丸ノ内線は危険にさらされる可能性がかなり高い。それで実際そういうことが起こった場合、どう対処するのかをハイパーレスキュー隊の方々に聞いたところ、『もうどうしようもない』と言われました(笑)。これはしめたと思いましたよ。つまり、彼らが分からないことなら僕らが自由に考えた物語にできますから」

崩壊した新橋駅構内も本物かと見まごう出来栄え
崩壊した新橋駅構内も本物かと見まごう出来栄え

――災害のシーンは、巨大なオープンセットやCGを用いることによってリアルで迫力のある映像になっていますが、映像面で一番こだわったところはどこですか?

「まずはセットやCGだと思わせないことですよね。リアルでなければ観客も身につまされないですから。嘘を描くという意味では、CGを用いればかなりのことを表現することができますが、ケレン味という発想はやめて迫真のリアル感を狙いました。リアル感を出すのは本当に難しくて、例えるなら空気を表現するようなことだと思うんです。だから水や炎だけでなく、実はそこに漂う煙や埃の動きなどをCGで表現しています」

――主人公はハイパーレスキューの仕事について苦悩を抱えている兄弟ですが、演じた伊藤英明さん、内野聖陽さんには演技面でどんな演出をしましたか?

2人の内なる葛藤も含め、 人の心の動きをとらえたドラマに
2人の内なる葛藤も含め、 人の心の動きをとらえたドラマに

「映画を見る観客は、最初から2人が兄弟だということは分かると思いますが、劇中で2人が顔を合わせるのは映画の終盤なんです。それまでまったく別の行動を取っているんだけど、お互いのことを意識しているという部分では、とても難易度の高いシナリオを作ったように思います。

レスキューの仕事に対しての葛藤も、実際に会って芝居していれば表現しやすいのですが、離れ離れで演じなくてはいけない。なおかつ2人の苦悩の原因である過去の事故は、あくまでも心の内に秘めておくべきことですよね。だから、そういった葛藤などを表現するのではなく、劇中で起こるシチュエーションに直面したときの心の動きを注視しようと話しました。また、この作品は一見するとパニック映画ですが、我々がやりたいのは人間ドラマなので、『人の心の動きを撮りたい』ということを全員に伝えましたね」

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