クライマーズ・ハイ : 映画評論・批評

クライマーズ・ハイ

劇場公開日 2008年7月5日
2008年7月1日更新 2008年7月5日より丸の内TOEI1ほかにてロードショー

未曾有の悲劇を深追いせず、映画的醍醐味が味わえる佳作に

画像1 (C)「クライマーズ・ハイ」フィルム・パートナーズ

あの夏の惨劇――直後に動き出す地元新聞記者たちの闘い。編集局内の確執や販売局との対立といった事態に直面し、ブンヤ魂が熱くほとばしる。カオスの中、脇役たちが活写され、局内の管理職・蛍雪次朗、遠藤憲一、でんでんら個性派キャラは、ここぞとばかり全開だ。

単なる事件記者ものではない。あれから23年経った現在から、極限状態の中を無我夢中で生きた全権デスク・堤真一が、トラウマともなった過去を思い起こし、今また新たな「山」に登り直すという構成を採っている。つまり、1985年の墜落事故は彼の心象風景でもあるのだ。

カット数の多さを豪語する原田眞人演出は、サスペンスフルではあっても、相変わらず内面の掘り下げにもどかしさを感じさせ、時折インサートされる現代のパートは、過去とうまく反照し合わない。立て籠もった若者たちの描写を一切捨象した権力礼賛映画「突入せよ!『あさま山荘』事件」の原田は、何を血迷ったのか、今度はもっと遺族側を描こうと画策したようだ。だが、原作者・横山秀夫から受けた「君は『クライマーズ・ハイ』がやりたいのか? 日航機墜落事故がやりたいのか?」という示唆が効いたようで、未曾有の悲劇そのものを描くだけの映画では終わらず、あの事故を通過した主人公の、組織という父性からの自立、息子との関係を修復し自身が父性を確立するというテーマは貫かれた。極度の興奮によって感覚が麻痺した状態を脱し、挫折を乗り越えて成長するという物語の核心はかろうじて担保され、映画的醍醐味が味わえる佳作に仕上がっている。

清水節

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