劇場公開日 2008年10月25日

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「平成三大女剣士」ICHI かみぃさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0平成三大女剣士

2009年10月16日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

楽しい

興奮

萌える

稚拙自ブログより抜粋で。
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 鑑賞前は「愛が見えたら、きっと泣く」とのキャッチ・コピーにヌルい恋愛映画になってたらやだなぁと危惧していたんだが、なかなかどうして色恋成分は最小限に抑えられた至極まっとうなチャンバラ娯楽時代劇として楽しめた。

(中略)

 最初に断っておくと、2003年の北野武版『座頭市』は観てますけど、世代的に間に合っていない勝新太郎の元祖座頭市シリーズはまったく観たことがありませんので、勝新版との比較はできません。
 そんなわけで“座頭市”にはそれほど思い入れはないんだが、“女剣士もの”は結構好きなジャンルで、そういう意味で期待に応えてくれたのがまずはともあれ嬉しい。綾瀬はるか演じる女座頭市がなかなかかっこいいのだ。

 近年の女剣士といえば上戸彩の『あずみ』シリーズ(1:2003年 北村龍平監督、2:2005年金子修介監督)が有名だろうが、これまで自分の中ではその上戸彩のあずみを含め、『さくや 妖怪伝』(200年原口智生監督)で安藤希が演じた咲夜、『修羅雪姫』(2001年佐藤信介監督)で釈由美子が演じた雪の三人を“平成三大女剣士”と呼んでいたんだけど、この綾瀬はるかの市が上戸あずみに取って代わったな。あずみは金子監督の2の印象が悪すぎた。

 北野武版『座頭市』は北野監督らしいバイオレンス風味をまぶしつつもいたって正攻法な娯楽チャンバラに徹していた印象だったけれども、本作も女座頭市という新機軸こそあれど、王道をゆく娯楽チャンバラである点は踏みはずしていなくてすこぶる好印象。いつの時代にも通じる座頭市の魅力、強いてはチャンバラ時代劇の魅力がここでも健在ということか。

 綾瀬はるかといえば『僕の彼女はサイボーグ』(2008年 クァク・ジェヨン監督)でのとぼけた可愛らしさが記憶に新しいのだが、本作ではそれとはまた違う可憐な力強さで魅了してくれる。
 正直この二作を観るまではとりたてて興味の湧かない女優さんだったんだけど、今年のこの二本で見方が変わった。ファンには今さらかと言われそうだが、いい味持ってるわ。
 ただ、殺陣シーンはそこそこ様になっているんだが、三味線の演奏は練習が足りないらしく、ほとんど顔のアップでごまかしているのが気になった。そういうシーンでもきっちり魅せてこそ殺陣シーンが際だつってものだから、手抜かり無くやって欲しい。

 一方、二枚目を演じることの多い大沢たかおの茶目っ気は楽しいし、歌舞伎役者でもある中村獅童の悪役ぶりもまさに貫禄の芝居。大沢たかおの刀を抜けない芝居や中村獅童演じる万鬼の高笑いなど、いい意味でデフォルメされた芝居臭さがここでは心地いい。
 万鬼の魔の手から宿場町を守ろうとするヤクザの息子・虎次を演じた窪塚洋介も、ヘタウマなのか計算された芝居なのかわからない魅力があって可笑しい。前半はひ弱なダメ息子っぽさが強調されるんだけど、クライマックスでは妙に頼もしい兄貴っぷりに惚れ惚れとする。
 そう、これはリアリティより芝居小屋で観る演劇のような見せ物に徹したエンターテイメント映画なんだ。

 説明的な市の独白やチャンバラシーンで多用されたスローモーション、市が十馬を想うシーンでのわかりやすいフラッシュバックなどに演出過剰を感じることもありはしたが、最初に危惧した「愛が見えたら、きっと泣く」そのままのクライマックスに嫌味は感じられず、素直に感動させてもらった。
 綾瀬はるかの演じる市の今後の活躍も見たいと思わせるに充分な快作。ぜひ続編を作って欲しい。

かみぃ