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ストーリー的にいって、悲しみが乾かないうちに終わってしまった作品でした。
やはりスザンネ・ビア監督作品であることが、その大きな理由でしょう。
彼女の描くテーマには、『しあわせな孤独』での交通事故、『アフター・ウェディング』の不治の病、『ある愛の風景』での夫の戦死といった、どれも喪失感や孤独といった悲劇とそれを乗り越えようとする人々の愛が描かれています。
けれどもストーリー展開が緩やかで、なかなか進展しないことと、ラストシーンが唐突過ぎて、何を描きたかったのかいまいち伝わらないという問題があります。女性監督ならではの細やかな表現、特に必要以上に迫るカメラアングルから、主人公の“哀しみ”や“不安”をクローズアップする手法においては優れているのです。やはり映画全体としての構成を整理して、何を主題に置くか、どうやったら泣きの場面がぐっと盛り上がるか、彼女の場合もっと計算が必要であると思います。スジをどう捉えるのかは観客任せで、ノンベンダラリンと起伏のないシーンを見せつけられたら、疲れますよ。
だけど試写を見た一部の人はこの作品を大絶賛しています。
まず絵がとても綺麗です。
そして、ストーリー構成は、ダメなんですが、演技の面では、見ている観客にも心の痛みがひしひし伝わってくるすごくいいシーンが続くのです。(個々の場面として)
2001年『チョコレート』でアフリカ系アメリカ人として初めてアカデミー主演女優賞受賞の快挙を成し遂げたハル・ベリーはこの作品でも真に迫る演技を披露していました。夫を突如失う、妻オードリーの不安定な感情、時として夫の友人ジェリーに八つ当たりするとき魅せる激情のなかに、深い悲しみといらだちを感じさせてくれました。
そしてハル・ベリーをもしのぐすごい演技をしているのが、ジェリー役のベニチオ・デル・トロです。
彼の役柄は、弁護士をしていたのに麻薬漬けになり堕落の日々を過ごしている男というものでした。時折見せる麻薬の禁断症状は真に迫っていて、この人ヤクをやっているのかと思ってしまうほどでした。
ジェリーについては、もっといいシーンもあります。
孤独に耐えかねてオードリーが寝室にジェリーを招き、熱く抱擁してもらうところです。寝静まったところで、そっとジェリーの手を握りしめて、ベットから離れていきます。
普通の男なら、据え膳は喰らっているところです。ジェリーにとっては、死んだ親友のカミさんを抱くわけにはいかなかったのでしょうけれど、それ以上にオードリーの孤独な気持ちが痛いほど彼にはわかるので、そっとしておいてあげたかったのでしょう。
もう少し後でも、悲しみを堪えられず、オードリーはジェリーにしがみつき、彼の胸に拳で何度もバタバタ叩きます。ジェリーは黙って叩かれながら、きつくオードリーを抱きしめるのでした。
その無言の演技のなかで、ジェリーもまた深く傷ついてきたことをうかがわせます。彼の過去は明かされませんが、ベニチオ・デル・トロの名演技で、その背中に背負っている悲しみがぷんぷんと伝わってくるのです。
深く傷ついたことのある人は、人に優しくならざるを得ません。ジェリーのオードリーや彼女の子供たちに向けられる眼差しには、麻薬常習者と思えない心の響く優しさを見せてくれました。
(但しあとでオードリーを思い浮かべて悶々とするところが、ジェリーの人間味溢れるご愛敬です。)
それとジェリーに遠くに行って欲しくなくて、オードリーの娘が必死に追いかけるところもウルウルしましたね(;_:)
単に悲しいだけの物語でなく、オードリー母子がジェリーも交え新しい家族へ再生していく、そんな希望も感じさせてくれるヒューマンな作品でありました。
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