崖の上のポニョ : 新作映画評論

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新作映画評論

崖の上のポニョ 崖の上のポニョ 7月19日より、日比谷スカラ座ほかにてロードショー

日本人の萎えた心を蘇生させる、純度の高いファンタジーの傑作

画像1(C)2008二馬力・GNDHDDT [拡大画像]

一途な想いを募らせて荒れ狂う波の上を全速力で走って走って跳躍し、どこまでも少年を追いかける少女――。横溢するパッションと歓喜のデフォルメに、アニメならではの幸福感が凝縮される。そう、幼少期にまで遡らなければ、もはや世の中を肯定することなどできないとばかりに、宮崎駿は臆面もなく5歳児や恋する人魚の主観になってみせる。ストーリー性よりも、こうあるべき慈愛に満ちた世界と高揚する映画的な瞬間が優先されるのだ。

ただし、ポジティブ思考の塊にも思える本作の背骨には、現状への痛烈なアンチテーゼが貫かれている。「ハウルの動く城」までに自分たちが積み上げてきた高度な表現技術の否定。手描きの絵を動かすという素朴なアニミズムによってこそ、生きとし生ける者に宿る生命感は謳い上げられる。さらに、「ゲド戦記」に象徴される息子世代の虚ろなエピゴーネンへの嘆き。強い意志もなく、観念や打算だけでは映画は生まれないという戒めだ。狂おしいまでの熱情によってこそ、生きる力が発揮されるという構造もそのために思える。そして根っこにあるのは、子供たちの可能性を奪う閉塞した現代への憤り。批判精神を押し込め、希望へと反転させた豊かな映像には凄味さえ備わり、宮崎の祈りにも似た切実な次世代への想いが全編にみなぎっている。これは、あふれんばかりのイマジネーションの大津波を浴びせかけ、日本人の萎えた心を蘇生させる、純度の高いファンタジーの傑作である。

清水節

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ABOUT THE MOVIE

  • 崖の上のポニョ 画像2
  • 崖の上のポニョ
  • 宮崎駿監督が「ハウルの動く城」以来4年ぶりに手掛けた長編アニメーション。海辺の町で暮らす5歳の少年・宗介は、クラゲに乗って家出した魚の子ども・ポニョに出会う。すぐに仲良くなる彼らだったが、ポニョはかつて人間だった父・フジモトによって海に連れ戻されてしまう。ポニョは父の魔法を盗んで再び宗介のもとを目指すが……。アンデルセン童話「人魚姫」をモチーフに、人間になりたい魚と少年の心温まる交流を描いたファンタジー。
  • 監督・脚本・原作:
    宮崎駿
    製作:
    鈴木敏夫
    音楽:
    久石譲
    美術:
    吉田昇
    主題歌:藤岡藤巻と大橋のぞみ
    出演:
    奈良柚莉愛、土井洋輝、山口智子、長嶋一茂、天海祐希、所ジョージ、柊瑠美、矢野顕子、吉行和子、奈良岡朋子
    2008年日本映画/1時間41分
    配給:
    東宝
  • 7月19日より、日比谷スカラ座ほかにてロードショー
  • オフィシャルサイト

(C)2008 二馬力・GNDHDDT

崖の上のポニョ

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