掲載作品数22610件
潜水服は蝶の夢を見る
(C)Pathe Renn Production-France 3
脳梗塞で左目以外動かなくなった雑誌編集長が、左目の瞬きだけを使って言語療法士と二人三脚で一冊の本を完成させるまでの実話の映画化。
この手の作品は、どうしても障害のある主人公の演技に目が行きがちで、そこにはどこか見世物的な趣があるように感じ、どちらかというと敬遠していました。ダニエル・デイ・ルイスも、ロビン・ウィリアムスも、ダスティン・ホフマンも、そしてロバート・デ・ニーローもみなさん障害者をがんばって演じてたけど、がんばればがんばるほど偽善ぽくってしらけちゃうんですね。
でも、この作品はしょっぱなから演出の仕方に工夫があります。ああやられると見世物的な感覚は緩和され、主人公の心情にすっと入っていけます。ストーリー展開はいたってオーソドックスですが、視点の設定が斬新なので退屈になりません。無理やり泣かせようとするのでなく、淡々と展開していく演出が、逆に涙を誘うこともしばしば。マチュー・アマルリックでしたっけ、主人公演じたフランス人俳優の人。とてもいい存在感ですね。
フランス映画観ると、いつも人間のリアリティを教わります。
オスカーノミネートのフランス人ジュリアン・シュナーベルが監督する映画" Le Scaphandre et le Papillon"="The Diving Bell and the Butterfly"=「潜水服は蝶の夢を見る」。
実在する主人公が書いた手記をもとに映画化されたものです。脳梗塞で左目以外動かせなくなった主人公の視点から見たものなのですが、この演出が素晴らしかったです。
映画の中の主人公の周りの人にとっては、コミュニケートが極めて難しい患者として写るのですが、彼の心の声を観客は聞くことができるため、観客にとっては広い表現力を持ったユーモアのある人物として映ります。
邦題にも仏題、英語題にもあるように潜水服の中に主人公とともに観客は閉じ込められます。潜水服の中から主人公と一緒に外界を観察しているような感覚に陥るこの映画、やっぱり監督の力量なんでしょうが、最初から最後までぐいぐい映画に引き込まれ、あっという間にラストシーンです。フランス映画には珍しく(?)心地よいカタルシスも得られます。監督賞ノミネートも当然?
おすすめです。
かつてここまで忠実に主観的な映像を再現したのは見たことがない。
アカデミー撮影賞が撮れなかったのが不思議なくらいだ。
映画は8割くらい主人公の目線で描かれる。その映像がとてもユニークで、ピンボケだったり、話し手の顔が見えなかったり、関係ないところを向いていたりする。これほど主人公と一体になれる映画は珍しい。自分の意思が伝わらないことのもどかしさ、手足の自由がきかないことへのイラつきが嫌というほど伝わってくる。
そんな苦しい状況だが、主人公は「想像」することで自由な身体を得て、何処へでもいけるのだ。この辺りの映像が、映画全体の息苦しさを緩和させる。
登場する女性はみな魅力的に描かれている。主人公は言葉には出さないものの、次第に感謝の気持ちや愛情が芽生えていると感じられる。
感動を押し付けるような映画ではなく、人間の温かみをしんみりと伝える秀作。
ただ、映像を楽しむにはある程度のスキルが必要かもしれない。
ロックトインシンドローム患者が瞬きで自伝を綴ったという事実には驚嘆するが、それを映像化して面白いかといえば、必ずしもそうではないし、その手法には大いなる工夫と困難がつきまとう。だが、この作品はそうした難問を、前宣伝ほどには克服できていない。それどころか、作品として哀しいくらい見事につまらない。
同患者にかろうじて残されたものは左目の自由の他に二つ。「記憶」と「想像力」。その貴重な「想像力」が貧弱で陳腐ときては誰も面白がれないし、楽しめないし、安手の涙さえ流せない。患者の「想像力」は大空を自在に羽ばたく「蝶」になれず、さなぎのまま朽ち果てている。一つ言えば、言語療養士の唇が何度も何度も繰り返す「E.S.A.R.I.N・・・」というアルファベッド、意味を持たぬはずのアルファベッドの文字がある様式美やリズムを伴ってしだいに耳に快く響いてくるのは意外であった。意味は不明だが、俳句か短歌のような定型詩を聞かされているような不思議な錯覚と陶酔にとらわれた。だが、だからといって、これはこの映画の評価を上げるものでは決してない。
- PR -
映画レビュー ユーザが投稿した映画作品に対する評価、印象、コメントがご覧になれます。お気に入りの映画があれば是非書き込んでみてください。