母べえ : 新作映画評論

現在の掲載作品数23666

母べえ

劇場公開日 2008年1月26日
RATE
RATE A-
母べえのレビューを書く
見たい度
見たい度を投票
クリップ数
母べえをクリップ
  • 母べえの作品情報
  • 母べえの注目特集
  • 母べえの映画評論
  • 母べえの予告動画
  • 母べえのフォトギャラリー
  • 母べえのDVD
  • 母べえの映画レビュー
  • 母べえのグッズ
  • 母べえの知恵袋
  • 母べえのつぶやき

母べえ 1月26日より丸の内ピカデリー2ほかにてロードショー

山田洋次が描く底辺の人々の静かなる抵抗

画像1(C) 2007「母べえ」製作委員会

一気に憲法改正までなだれ込みそうな、きな臭い空気が立ちこめていた頃に企画制作が進行していた本作は、軍靴の響きが高まった昭和10年代の庶民の暮らしを鮮やかに映し出す。質素な暮らしを送る4人家族の家に、ある日特高警察が土足で踏み込んできて、父を手縄にかけて連行する。政府を批判する文章を発表した罪だった。生活苦に追いやられ、周囲の助けを借りて生き抜いていく母と幼い娘たちの姿を、涙と笑いで包み込む。浅野忠信、鶴瓶ら家族を取り巻くキャラの配置が絶妙。声高に反戦を唱えるわけではない。何かを断念した想いが累積して心の叫びとなり、画面の奥から聞こえてくるようだ。

山田洋次にとって、家族が終生のテーマであることは言うまでもないが、言い換えればそれは常に、時の体制の中で翻弄される底辺の人々の静かなる抵抗を描くということだ。高度成長期に背を向けて放浪した「寅さん」も、腐敗した上層部を下級武士が討つ「時代劇3部作」も本質は同じ。格差が開き、底辺の切実な声が政治に届かなくなった今、本作では戦前の愚かな日本を通して、同じ過ちを繰り返すまいと警鐘を鳴らし、つつましやかな暮らしを称える。

この映画にはデフォルメがある。60代の吉永小百合が30代の母に扮するのだ。しかしそれは、すんなりと受け入れることができてしまう。今どきの30代女優では、家族のために献身的に尽くし、ひたむきに生きるあの時代の母親像を演じることは不可能だったかもしれない。清廉なイコンは年齢を超えて、普遍的な日本の聖母になり得ている。

清水節

ブックマーク: Yahoo!ブックマークに登録する はてなブックマークに追加する livedoorクリップに登録する Buzzurlにブックマークする newsingにピックアップする

ABOUT THE MOVIE

  • 母べえ 画像2
  • 母べえ
  • 山田洋次監督&吉永小百合主演による人間ドラマ。黒澤明監督作品のスクリプターとして活躍した野上照代の自伝的小説を原作に、激動の昭和初期をたくましく生き抜こうとする1人の母の姿を通して家族の素晴らしさを描き出す。昭和15年の東京。野上佳代は夫の滋や2人の娘と仲睦まじく暮らしていた。しかし、戦争反対を訴えていた滋が治安維持法で検挙されてしまう。
  • 監督:
    山田洋次
    脚本:
    山田洋次、平松恵美子
    原作:
    野上照代
    撮影:
    長沼六男
    音楽:
    冨田勲
    出演:
    吉永小百合、浅野忠信、檀れい、志田未来、佐藤未来、坂東三津五郎、中村梅之助、笹野高史、でんでん、近藤公園、吹越満、左時枝、鈴木瑞穂、戸田恵子、大滝秀治、笑福亭鶴瓶
    2007年日本映画/2時間12分
    配給:
    松竹
  • 1月26日より丸の内ピカデリー2ほかにてロードショー
  • オフィシャルサイト

(C)2007「母べえ」製作委員会

- PR -

ガイド

新作映画評 人気映画評論家による最新作批評のコーナー。近日公開または公開中の最新作の中から編集部が選りすぐった作品を、毎週3作品ご紹介。更新は、毎週火曜日。

読み込み中...