イントゥ・ザ・ワイルドのレビュー・感想・評価
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生涯で最も印象に残った映画の一つ
劇場で2回観てパンフレットも購入し、その後ブルーレイも買って5回以上観ています。封切りからもう15年になりますが、私にとっては生涯ベスト3に入る映画です。
ネタバレにならないように言葉を選んで書きましょう。
個性派俳優として名高いショーン・ペンは、前作『プレッジ』でも監督としての類い希な才能を見せてくれましたが、この作品では実在した一人の青年クリス・マッキャンドレスの人生を丁寧に描いています。何より台詞の一つ一つが宝石のように貴い。
君たちはどう生きるかではなく、彼はどう生きたか……ですが、短かった彼の人生を通して人としての尊厳や人生の中で大切なものを語ってくれたと、私はショーン・ペン監督からの重いメッセージとして受け止めました。
今まで多くの人に推薦してきましたが、そのリアクションは7対3くらいで、「素晴らしかった!」か「人生最悪の映画だった……」のどちらかでした。
さて、あなたはどう感じる(感じた)でしょうか?
バックパッカーになって旅に出たくなる映画
映像と脚本の優れた映画、そしてこの物語が実話を基に書かれていると思うと、主人公に感情移入してしまう。
仕事に忙殺されがちな毎日のなかで、ふと、ザックにシュラフを詰め込んで旅に出たくなる。そんな映画です。
複層的青春佳作
アラスカのサバイバル一辺倒と思いきや、アラスカまでのロードムービーと妹のナレーションが交錯した飽きない構成が特徴的な、なかなか味わい深い秀作です。
特に妹のナレーションは無軌道な兄の行動をタイミングよく弁護し、且つ切ない演出が冴えています。最後に出てくるおじいちゃん、どっかで見たと思ったらキャラハン刑事の宿敵でした。
物事を正しい名前で呼ぶこと
大学を優秀な成績で卒業した主人公の青年クリスはある日、仲のよかった妹にさえ告げずに旅に出る。
アメリカ、メキシコを歩き回る途上でいろいろな人たちと出会い、いろいろな経験をし、最後に夢のアラスカにいたる。
山に分け入り、偶然見つけたうち捨てられた「魔法のバス」で一冬を越すことにする。
実話をもとにした青春ロードムービー。
ふつうロードムービーは旅を通して主人公が成長していくさまを描きますが、この映画では主人公は最後まで主人公のままで、むしろ周囲の人々が変化していきました。
けれど最後の最後に主人公は転換をする。
それは予定調和的でもあるのですが、それが持つメッセージは強く心に残りました。
彼は両親の不仲に、彼らが自分を管理しようとすることに、そういう不幸が存在する世界に、うんざりしていた。
しかし絶望はしていなかった。絶望するには頭がよかった。
そして「人間関係以外にも大切なことがある」と考えていたから、自然に入り込んで(into the wild)いった。
映画で何度か青年の失踪に苦しむ両親が映される。
彼らは息子を喪失して初めて彼らにとっての青年の大切さを知った。そして絶望した。
喪失と絶望のセットが描かれる。
無事に越冬した青年は山を下りようとするが、川が増水して渡れず、山に閉じ込められてしまう。
獲物はいない。空腹がつらい。
植物図鑑を手に野草を摘むが、不注意で毒草を食べてしまう。
治療しなければ死ぬものだ。山には誰もいない。青年の死は決まった。
毒と飢餓に苦しみ、死に臨んだ青年は板に文字を刻む。
「happiness is real when shared」ーー幸福は分かち合って本物になる。
青年は両親や世の中にうんざりしていたときも、絶望はしていなかった。
死ぬなど考えなかった。それが今、自分ひとりではどうにもならない窮地に追い込まれた。
自分“以外”を喪失して初めて、彼はついに絶望した。
そして同時に希望を抱きえる誰かがいて初めて幸福がありえることに気づく。
喪失と希望がセットで描かれる。
この映画では、誰かの存在と喪失は裏表で、それらと希望と絶望はセットであることが、最後に示される。
私はときに自分以外要らないような気持ちになるけれども、それがただの傲慢であることはなんとなくわかっている。
それが本当に「若者にあってしかるべき傲慢なんだよ」と、この映画は諭すではなく示してくれました。
傲慢になったり謙虚になったりしながら「頭でっかち」でない人間に成熟できればなぁと思ったのでした。
この映画でなんとなく頭に残っているせりふがあって、それは「物事を正しい名前で呼ぶこと」という、主人公が読んでいた思想書の一説です。
物事を正しい名前で呼ぶ。なんて難しいのか。
でもこの言葉の響きはとても凛としてかっこいいので心にとどめたいです。
この言葉が主人公を死に追いやったといっても過言でないのですが。
独りになりたい気持ちはわかります・・
家族にも何も言わず突然姿を消し大自然へというのは、僕だったら無理ですね・・天涯孤独になったとしてもある程度は「物」が溢れた生活でないと。 僕はご近所付き合いとか面倒くさい人間なので、人間関係を切り捨てていくならある程度は大丈夫かも(笑) 静かな場所がいいですが、人がいなさ過ぎるのも怖いかな(笑)
動機は何だったのか・・
フィクションなら家出同然の放浪の旅に出る主人公の動機についてもう少し時間を割いて描いていただろう。おそらく自分探しの旅とか厭世観などありきたりのことは推測できるが、彼の場合は強い意志に貫かれているようで単なる冒険心や逃避行とも思われない、あえて過酷な環境に身を投じる行動はある種、行者の修行にも思えた。単なる若者の放浪記、ロードムービーと違うのは彼が不慮の死を遂げている実話ベースの重みだろう。
自然が好きで慈善団体に寄付する志があるなら環境保護団体に入って活動するとか自然科学の学者になるとかいくらでも選択肢はあったのに残念、甘え上手にも見えるから人嫌いと言う訳でもなさそうだが束縛や干渉を異常に嫌う性格なのだろう。ベトナムや湾岸戦争などトラウマやPTSDに悩む若者の悲劇とも違って、多少父親とは折合が悪いようだが恵まれた家庭環境、優秀な成績で大学を卒業した未来を嘱望される若者が何故?という素朴な疑問が頭から離れず、主人公に感情移入できずに終わってしまった。
前半はなんとなく、、大きな展開もなく 間延びして感じた。 ただ、こ...
前半はなんとなく、、大きな展開もなく
間延びして感じた。
ただ、これは実話が元になっているので
編集しきれない部分はあるのだろう。
ところどころに伏線がはられ
最後に回収されながらのあのラストはとても胸が痛く
実話ならではの救いのなさ。
皆に好かれた青年のあまりにも早すぎる壮絶な死に
観た後の余韻からなかなか抜け出せなかった
最初観た時は、とても感動しました
家族、お金、全てを捨てて荒野へ向かう主人公。
旅の途中で出会いと別れを繰り返し、ラストまで成長してゆく姿に
本当にこの世で大切なものは何なのか?を考えさせられ、泣きました。
しかし2回目に観た時は
あれ?何で荒野に行くの?と全然共感できなくなってしまいました。
観る人を選ぶ作品だと思います。
今持ってる面倒なものを全て捨てて
どこか遠くに行きたくなっている方には、是非観賞をオススメします。
"アレグザンダー・スーパートランプ"
ショーン・ペンが"俺より先に有名だった"と憧れた連中、波乗りから始まり、コンクリートや水を抜いた楕円形のプールで暴れまくるステイシー・ペラルタ監督作「Dogtown &Z-Boys」のナレーションを務め、そんな"Z-Boys"のメンバーの中でも最高にイカした不良スケーター、ジェイ・アダムスを「ロード・オブ・ドッグタウン」で演じた若かりしエミール・ハーシュと、監督ショーン・ペン、主演エミール・ハーシュの劇的な共通点が個人的には堪らない本作。
音楽的にグランジは通らなかったが、エディ・ヴェダーの音楽と歌声も素晴らしい。
実話でありジョン・クラカワーの原作も読んで面白かったけれど、前三作品の監督作を思い返してもショーン・ペンって、こんなに巧かったっけ!?
なんとも終盤のロン爺には泣かされる物語があり、続いて父親のW・ハートの姿で号泣してしまう。
オムニバス映画「11'09"01/セプテンバー11」でのアーネスト・ボーグナインの渋い雰囲気からの哀愁漂う爺さんも良かったショーン・ペンの手腕。
あんなに賢い筈なのに小さなミスが致命的に、旅で出会った人々皆が窮地を知っていたら誰もが駆け付けたであろうに、そんな状況が歯痒くて虚しい。
でも主人公には腹が立ってしまうし、悔しい気持ちになってしまう。
両親だけではなく旅先で出会った皆が帰りを待ちわびていたのに、彼自身も孤独の旅から帰還しようとしていたのに、あんな最期は観ていて辛い、酷過ぎるヨ、神様!!
アメリカの広大さ、素敵な出会い、旅をする目的、自然の厳しさ、人間の本質と、どれも経験し思い悩むことも許されない?現代社会の忙しなさ!?
本人にしか分からない孤独と闇
この映画を見て自殺した同級生を思い出した。
成績優秀、容姿端麗、仲間に囲まれ徳のある、一見、順風満帆の同級生。
本人にしか分からない地獄がある、というニュアンスの発言をしたのは宇垣美里さんだったか。
本作の主人公にも深い孤独と闇があったのだろう。give me truth という何と切ない響きか。頭にこびりついて離れない。
元々、ほぼ死に片足を突っ込んだ状態での旅の始まりだったのだろう。初めて自由を手にした青年は最も人生が輝いた季節に悲しい死を遂げる。
青春と孤独と純粋無垢な心が旅を終えた。
困った奴だ
純粋で自身の信じる思考に基づいて、荒れ地を目指す世捨て人とも言える主人公。
現代社会の欺瞞に対する不満など彼の視点で語られていく。
ヒッピー文化に詳しくないが「生きたい所で生きる」と言う社会的な束縛からの離脱した生き方は少し羨ましいとも思ったが、人は何処にいてどんな暮らしをしても悩みは尽きないものだ。
彼が何をしたかったのか?自己の望むままに、自然で困難な生き方をしたかったとしか言いようがない。
彼の生き方は長生き出来ないのは当たり前であるが、彼と反対側に生きている自分としては言い訳も文句も言いたくなる。
彼と出会う優しい大人たちが彼に自身の経験を踏まえた教えを伝えていくのだが、彼は他人に新しい生き方を選択しろと言いつつ、頑なにアラスカを目指して行き、当初の目的を変えない。
家族を悲しませ、出会ってきた人を悲しませてまで、彼がしたかった事がこれか?と思うとやるせない。
作品として若い人に観てほしいとは思わない。
自然に生きる事、社会の束縛から抜け出したい人が行動に移して得られた事を断面的に見る事が出来るので、出来ない生き方に憧れる人にどうぞ。
1人になりたがるのはなんでだろう
アラスカだったり知床だったり、圧倒される自然に焦がれているんだなぁ。
風景を観ているだけでも癒された。
1人旅に出て、すごくいい景色を見ることができたり、気持ちいい風を感じることができたり、旅に出ないと出会えない人に出会えたり、そんな素晴らしいことが起こったとする。
それらを1人で感じるのは、四則演算なく、イコール。そのままを受け取る。
(「恐怖」は増幅するか)
誰かと一緒にいると、四則演算が起こる。
+ー*/全部。
旅だとそれが印象的で心に残りやすい。でもそれは日常でも同じことだ。
1人でいる、ということはそのままあるがままで、どこにも1ミリも動かない。
幸せは、分かち合うこと。
なのかもしれない。
もちろんそうやって生きていきたいんだけど、1人にわざとなりたい時はある。
1人になるには、イントゥザワイルドするのがいちばん。
街には他者が溢れかえっている。
そういう意味では気持ちがわかる。
Sean Penn
人生を描く映画は多いが、3層で描く作品は初めて見た。
ショーンペンの監督・脚本としての才能を痛感した。主人公が普段の生活に嫌気がさして、これまでの全てを捨てて、旅に出るという、いたって映画的なストーリーなのだが、そのストーリーの進め方が魔法のようだった。
この映画は3つの層になって物語が進んでいく。
・主人公クリス(アレックス)が一人で旅をしていくストーリー
・妹カリーンのナレーションで息子が出ていった後の両親を過去のエピソードを交えながら語っていくストーリー。
・主人公が旅の終盤見つけた、マジックバスト呼ぶバスでの数ヶ月のストーリー。
その3つの色合いは大きく違いながらも、相互に関係し合いながら、視聴者を引っ張っていく、勢いが凄まじかった。3つの話の中に出てくる人物の数が大きく違う。最初のメインストーリーは、クリスとクリスが旅で出会う様々な人々。2つ目のナレーションのストーリーはクリスの家族4人。最後のマジックバスでのストーリーはクリス1人。この人物の違いがストーリーを進める大きな真となっており、人とのつながりというものと、1人の人生というもののコントラストとハーモニーを描いている。ハーモニーをえがいているときは、とてもオープンで色々なことが起き、出会いや別れが連続し、一歩ずつ歩みを進めていく主人公。一方コントラストで、孤独や生きるということ、自然を描くときには、一歩立ち止まって自分を見つめ直すこと、一歩立ち止められて、後戻りをすることなど、リズムが落ち着く。この2つがとてもバランスよく構成されている気がして、全く単調ではなく、次にどのような人が出会うのか、どのような場所に行くのかというワクワクが止まらなかった。
さらにはそこに音楽が飾り付けをする。劇中実際に歌われる音楽から、バックグラウンドミュージックまで映画に占める音の割合というのは、本当に大きいんだなと実感させられた。音楽は0から1を作るというよりも、5や6を9や10にまで持っていくような役割。
主人公があまり途中で大きなものを失ったり、出会う人々から大きなものを学ぶというよりも、出会う人々に何かを残していくというストーリーが多かっただけに、主人公のキャラクターに感情移入するという部分では少し薄かったのかもしれない。むしろ、ドキュメンタリーのような彼の人生を描くことによって、我々の人生に枝を1本増やしてくれるような、バイオグラフィー的なドラマでした。
ジェイ・キャシディの編集の力を突きつけられた。とても自然なのにパワフルな編集、映画一本の中で、一周するような、スタートを思い起こさせ、エンディングにつなげるようなリズムの取り方と、ショットの選び方。リズムの帝王なのか。。。。
親が可哀想
はじめは、自己中な主人公が、自己満足の旅をする話だと思った。物質的な豊かさに反抗するのに、人の車だったら平気で乗せてもらったりするところとかに一貫性がないと思ったからだ。でも、後半は親が可哀想だと思って見ていた。遠く離れて初めて与えられた愛情のありがたみを知るというのは真実だと思うが、遠く離れすぎて二度と会えなくなるのでは元も子もない。親も子も、ひどいすれ違いをしていたのだろう。ちょっと救いようのない話である。
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