つぐない : 新作映画評論

掲載作品数22430

映画のことなら eiga.com エイガ・ドット・コム

新作映画評論

つぐない つぐない 4月12日より、テアトルタイムズスクエアほかにてロードショー

語りのたくらみも綿密だが、練り込まれた技巧に舌を巻く

つぐない (C)2007 Universal Studios.All RIGHTS RESERVED

ジョー・ライトはマキノ雅弘の演出術を学んでいたのか。「つぐない」の序盤、カントリーハウスの内部を少女が早足で歩くシーンを見て、私は思わずつぶやきそうになった。

それほどまでに、役者に対する芝居の付け方が具体的なのだ。山田宏一の著書によると、かつてマキノは「二歩出て体を引いて、こうして回せば女らしく見える」といった指導を手取り足取り行ったらしい。もしかするとライトも、「廊下の端から端までを10秒で歩いて」とか「この台詞は5秒で言い終えて」とかいった指示を出していたのではないか。

撮影や編集に凝る監督は多くても、役者に具体的な芝居を付けられる監督は少ない。私はかねがね、これを不満に思っていた。35歳のライトは、この難事業に挑んだ。わけても彼は、言葉と音に対する感覚が鋭い。

13歳の少女の嫉妬と勘違いが嘘を生み、その嘘が致命的な悲劇を招くという物語。ありがちな設定に二重三重の底を仕込む語りのたくらみも綿密だが、「つぐない」の前半には、「話の筋を一瞬忘れさせる」映画的快感が何度か噴出する。とくに注目すべきは、タイプライターの音と妹ブライオニーに扮するシーアシャ・ローナンの動きか。ライトは、ここで映画の心拍数を決定している。キーラ・ナイトレイのうっとりするような早口や、ダンケルクの海辺の5分半にわたる長回しも眼を惹くが、勝負はやはり立合いだったはずだ。ライトの技を、私は評価したい。

芝山幹郎

ブックマーク: この記事をYahoo!ブックマークに登録する この記事をはてなブックマークに追加する この記事をlivedoorクリップに登録する この記事をBuzzurlにブックマークする この記事をPingKingのマイポッケに入れる この記事をnewsingにピックアップする

ABOUT THE MOVIE

  • つぐない
  • つぐない
  • 1935年イギリス。ある夏の日、タリス家の末娘ブライオニーは、姉セシーリアと使用人の息子ロビー・ターナーの些細ないさかいを目撃し……。ひとりの無垢な少女の嘘によって人生を狂わされてしまった一組のカップルの運命を描く、現代英国文学界を代表するイアン・マキューアンによる傑作小説「贖罪」(新潮社刊)を、「プライドと偏見」のジョー・ライト監督&キーラ・ナイトレイ主演で映画化。共演にジェームズ・マカボイ、ロモーラ・ガライ、バネッサ・レッドグレイブら。
  • 原題:
    Atonement
    監督:
    ジョー・ライト
    脚本:
    クリストファー・ハンプトン
    製作総指揮・原作:
    イアン・マキューアン
    製作:
    ティム・ビーバン、エリック・フェルナー、ポール・ウェブスター
    撮影:
    シーマス・マクガービー
    音楽:
    ダリオ・マリアネッリ
    美術:
    サラ・グリーンウッド
    出演:
    キーラ・ナイトレイ、ジェームズ・マカボイ、シアーシャ・ローナン、ロモーラ・ガライ、バネッサ・レッドグレイブ、ブレンダ・ブレッシン、パトリック・ケネディ、ハリエット・ウォルター、ベネディクト・カンバーバッチ、ジュノー・テンプル、ジーナ・マッキー、ジェレミー・レニエ
    2007年イギリス・フランス合作映画/2時間3分
    配給:
    東宝東和
  • 4月12日より、テアトルタイムズスクエアほかにてロードショー
  • オフィシャルサイト

(C)2007 Universal Studios.All RIGHTS RESERVED

つぐない

  1. 作品ページ
  2. 映画レビュー
  3. 注目特集
  4. 映画評論
  5. 動画・予告編
  6. フォトギャラリー
  7. 映画館検索

- PR -

ガイド

新作映画評 人気映画評論家による最新作批評のコーナー。近日公開または公開中の最新作の中から編集部が選りすぐった作品を、毎週3作品ご紹介。更新は、毎週火曜日。

読み込み中...
© eiga.com inc. All rights reserved.