劇場公開日 2008年3月8日

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ダージリン急行 : 特集

2008年2月22日更新

ウェス・アンダーソン作品は、ファッションや音楽に溢れるポップなアート感覚や、おなじみの俳優たちが演じる、ちょっと風変わりな家族の物語が大きな魅力だが、「ダージリン急行」にもそんなツボが満載。今回は、ファッション、音楽、物語の3つに分けて、魅力を分析してみる。ウェス・アンダーソン監督インタビューとあわせてお楽しみあれ。(文:編集部)

ウェス・アンダーソン・ワールドの魅力~溢れるポップなアート感覚

インド風でありながらも、どこか“ウェス・アンダーソン的”な列車
インド風でありながらも、どこか“ウェス・アンダーソン的”な列車

~ファッション編~
キュートなアイテムに注目!世界にひとつのマーク・ジェイコブスのスーツケース!

劇中でもかなり目をひくスーツケース これは欲しい!?
劇中でもかなり目をひくスーツケース これは欲しい!?

ウェス・アンダーソン監督作の魅力といえば、まずはキュートなファッション系アイテム。

ザ・ロイヤル・テネンバウムズ」ではラコステのワンピースとアディダスのジャージ、「ライフ・アクアティック」ではルイ・ヴィトン風スカーフとアディダスのスニーカーが活躍したが、今回のキーアイテムは3兄弟が持ち歩くスーツケース。デザインは、ルイ・ヴィトンのデザイナー、マーク・ジェイコブス。ケース表面の野生動物のイラストは、「ザ・ロイヤル・テネンバウムズ」でも美術に参加したアンダーソン監督の弟、エリック・アンダーソンが描いている。このスーツケースが画面に登場するだけで、インドな風景がいつものキュートなウェス・アンダーソンの世界に変貌してしまう。

ウェス・アンダーソン流のポップなアート感覚は3兄弟が乗る列車の内装と外装でも炸裂。色彩設計とデザインがアンダーソン流なので、素材にインドの伝統的な織物や染色技術が使われても、車体外部のインドゾウ模様を現地のペンキ職人が描いていても、出来上がりは、いつものウェス・アンダーソンの世界なのだ。

~音楽編~
音楽はワザあり!今回はインド映画の音楽にキンクス、ストーンズをプラス!

おシャレでワザのある音楽使いもウェス・アンダーソン監督作のチャーム・ポイント。

サントラも要チェック! (3月5日発売/税込2500円/ ユニバーサルミュージック)
サントラも要チェック! (3月5日発売/税込2500円/ ユニバーサルミュージック)

音楽スーパーバイザーはいつものランダル・ポスター。「ザ・ロイヤル・テネンバウムズ」では、ボブ・ディランやベルベット・アンダーグラウンドなどの名曲を登場人物のキャラに合わせて使用。「ライフ・アクアティック」ではデビッド・ボウイの初期名曲をスペイン語のギター弾き語りでカバーしたが、今回はインド映画の音楽を使用。

しかも、インド人によるインド映画と、アメリカ人監督と英国資本によるインド映画という2種類のインド映画を使っているところがワザあり。インド映画の巨匠サタジット・レイの「チャールラータ」(64)他の映画音楽と、英国植民地支配下のインドを舞台にした映画で知られるマーチャント・アイボリー・プロ(ジェームズ・アイボリー監督と映画製作者イスマイル・マーチャンが設立したプロダクション)の「ボンベイ・トーキー」(70・未)などの映画音楽が登場。さらに英国を代表する名バンド、ザ・キンクス、ザ・ローリング・ストーンズの曲を数曲プラスして、ウェス・アンダーソンの世界を繰り広げる。

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~物語編~
ドラマは癒し系!今回もトラブルを抱えた3人兄弟が登場!

恋に夢中な三男ジャックにも、監督自身が投影されている?
恋に夢中な三男ジャックにも、監督自身が投影されている?

ビジュアル面、音楽面ともファッション感覚満載のウェス・アンダーソン監督作だが、実は物語の基本は、ほのぼの癒し系。機能不全に陥った家族(あるいは「ライフ・アクアティック」のような疑似家族)が、お互いを認め合い、家族の絆を取り戻していく物語を描き続けている。そして、3兄弟の末っ子ジャックが自分の生活そっくりの小説を書いているように、アンダーソン監督も映画に自分の生活を反映させているのかもしれない。

まず、3兄弟の両親同様、監督の両親も離婚。そして、「ザ・ロイヤル・テネンバウムズ」も本作も、物語の中心は3人兄弟だが、ウェス・アンダーソン監督も、彼の大学時代以来の親友で本作にも出演しているオーウェン・ウィルソンも、実生活では3人兄弟(ちなみに2人とも真ん中)。そして、3兄弟の母親を演じたアンジェリカ・ヒューストンは「ザ・ロイヤル・テネンバウムズ」でも3兄弟の母親を演じたが、この映画を見たアンダーソン監督の父親が「おまえ、あのキャラクターは母さんに似すぎていないか?」とあせって電話をかけてきたと、監督自身がインタビューで語っている。

彼が描き続ける家族の絆の再生の物語は、監督の気持ちの素直な表出なのかもしれない。

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