やわらかい手 : 新作映画評論

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やわらかい手

劇場公開日 2007年12月8日
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やわらかい手 12月8日よりBunkamuraル・シネマにてロードショー

残酷の先にある慈悲の光。M・フェイスフルの肉の濃さを見よ

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雲は厚い。射してくるのは灰色の光だけだ。幼児が難病を患っている。家族は裕福ではない。治療に必要な金を、祖母が工面しようとする。

設定だけを見れば「やわらかい手」は陰鬱に映るかもしれない。最悪の扱いをすれば、不快なお涙頂戴映画になる。「困ったときのセックス頼み」といった発想を安直に持ち込めば、「フル・モンティ」や「カレンダー・ガール」のようなくすぐったい映画に陥る。

が、「やわらかい手」は、どちらにも属さぬ細い道を通り抜けていく。できあがったのは、重心の低いメランコリーとおだやかな笑いに満ちたディープな映画だった。

原動力は、なんといってもマリアンヌ・フェイスフルの存在だろう。彼女が演じるマギーは50歳の地味な寡婦だ。が、マギーは性根が据わっている。体型はぬいぐるみを思わせるが、背筋が伸びているし、眼の奥には物に動じない光が宿る。そんな彼女が、やわらかい手を駆使して、性風俗店で孫の治療費を稼ぎ出す。切実な行為だが、どこかドライで滑稽な味も漂ってくる。男たちは長蛇の列を作り、マギーはテニス・エルボーならぬペニス・エルボーを発症する。名誉の負傷だ。

映画の急所は、「仕事」を通じてマギーが世界と向かい合う方法を学ぶところか。彼女は恐怖を克服し、残酷の先にある慈悲の光に触れる。ここが美しい。「40年分の修羅場を踏んだ」とさえ評されるフェイスフルの肉の濃さが、マギーという器から滲み出ている。

芝山幹郎

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ABOUT THE MOVIE

  • やわらかい手 画像2
  • やわらかい手
  • 60年代のポップ・アイコンとして世界中を魅了したマリアンヌ・フェイスフルが38年ぶりに主演を務めた人間ドラマ。ロンドン郊外で暮らす主婦マギーは、孫の手術費を稼ぐために奔走していた。ある日“接客係募集”の貼り紙を目にした彼女は面接を受けるが、なんとそこは壁越しに手でサービスする風俗店。戸惑いながらも仕事を始めたマギーは、自分が意外な才能を持っていることに気付き……。共演に「アンダーグラウンド」のミキ・マノイロビッチ。
  • 原題:
    Irina Palm
    監督:
    サム・ガルバルスキ
    脚本:
    マーティン・ヘロン、フィリップ・ブラスバン
    撮影:
    クリストフ・ボーカルヌ
    音楽:
    ギンズ
    出演:
    マリアンヌ・フェイスフル、ミキ・マノイロビッチ、ケビン・ビショップ、シボーン・ヒューレット、ドルカ・グリルシュ、ジェニー・アガター
    2006年イギリス・フランス・ベルギー・ドイツ・ルクセンブルク合作映画/1時間43分
    配給:
    クレストインターナショナル
  • 12月8日よりBunkamuraル・シネマにてロードショー
  • オフィシャルサイト

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