サラエボの花 : 新作映画評論

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ヴェロニカ・マーズ

新作映画評論

サラエボの花 サラエボの花 12月1日より岩波ホールにてロードショー

静かな迫力みなぎる語り口で綴る、怒れる娘と傷だらけの母の思い

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ボスニア紛争が終結して10年余りが経っても、市民の心の傷は未だ癒えていない。同テーマの近作「あなたになら言える秘密のこと」は独りぼっちで生きる若い女性の物語だったが、この映画の主人公エスマは12歳の娘を持つシングルマザーだ。ちょっと勘のいい人ならば、娘の父親に関するエスマの秘密が何であるかは序盤のうちに察しがつく。しかし、いくら話が読めたとしても、戦争被害者の傷痕の深さまでは推し量れない。この映画はその痛みを圧倒的な説得力をもって観る者に伝えてくる。

とはいえ物語は復興が進む現代のサラエボの街なかのみで展開し、悲惨な紛争の回想シーンは一切ない。ナイトクラブで働きながら必死に生きるエスマの日常を丹念に描き、普通の生活を維持することの厳しさを表現していく。1974年生まれの女性監督の慎ましくも粘り強く、静かな迫力みなぎる語り口。エスマとクラブの用心棒との異性関係や、娘の修学旅行費をめぐるトラブルなど、ひとつひとつの逸話に重い意味と感情がこもっている。

そして娘サラに扮したルナ・ミヨビッチという子役の素晴らしさはどうだ。このふてぶてしい態度を連発して母を困らせる生意気娘の表情、そして一挙一動が実にスリリングなのだ。怒れる娘と傷だらけの母の思いが通じ合うラスト・シーンを、しっかりと見届けてほしい。これを奇跡と言わずにいられようか!

高橋諭治

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ABOUT THE MOVIE

  • サラエボの花 画像2
  • サラエボの花
  • ボスニア内戦から10数年の時を経たサラエボを舞台に、戦争の犠牲となった女性の再生と希望を描いた人間ドラマ。女性監督ヤスミラ・ジュバニッチがメガホンを取り、デビュー作にして06年度ベルリン国際映画祭でグランプリに輝いた。母娘2人でつましい生活を送るエスマと12歳のサラ。シャヒード(殉教者)と聞かされていた父親の死に疑問を持ち始めたサラは、真相を話そうとしないエスマに反感を募らせていき……。
  • 原題:
    Grbavica
    監督・脚本:
    ヤスミラ・ジュバニッチ
    製作:
    バーバラ・アルバート、ダミル・イブラヒモビッチ、ブルノ・ワグナー
    撮影:
    クリスティーン・A・マイヤー
    出演:
    ミリャナ・カラノビッチ、ルナ・ミヨビッチ、レオン・ルチェフ、ケナン・チャティチ
    2006年ボスニア・ヘルツェゴビナ・オーストリア・ドイツ・クロアチア合作映画/1時間35分
    配給:
    アルバトロス、ツイン
  • 12月1日より岩波ホールにてロードショー
  • オフィシャルサイト

サラエボの花

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