ノーカントリー : 新作映画評論

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ノーカントリー

劇場公開日 2008年3月15日
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ノーカントリー 3月15日よりシャンテシネほかにてロードショー

眼を凝らせ、耳をそばだてよ。コーエン兄弟の神技が観客に迫る

画像1(C)2007 Paramount Vantage,
A PARAMOUNT PICTURES company. All Rights Reserved.

荒野に虚無や寂寥を見る映画は、掃いて捨てるほどある。荒野に抒情を求めた映画も数多い。が、荒野と錬金術を結合させようとした映画が、かつてあったろうか。「ノーカントリー」のコーエン兄弟は、そんな難関に挑んでいる。舞台は1980年の西テキサス。主な登場人物は3人。麻薬がらみの200万ドルを持ち逃げした男。金を取り戻そうとする殺人者。殺人者を追う保安官。

単純な構図に見えるが、いわゆるキャット&マウス・ムービーの印象はすぐに蒸発する。殺人者の存在があまりにも危険で、理不尽なまでに邪悪だからだ。最悪の髪型をしたこの男は、高圧ボンベ付きの家畜用スタンガンで、鍵穴も人間の額も同じように撃ち抜く。快楽や苦悩は介在しない。恐ろしい存在だ。おかしい存在だ。まるで死神や運命の化身を思わせるが、話をそこに落とすのは退屈だ。殺人者は地上を離れず、逃亡者を追い詰めていく。

その過程で、コーエン兄弟は考えつく限りの映像技巧を動員する。荒野の空白と狭い室内の窒息感を対比させるだけではない。光と音を、というより影と沈黙を最大限に活用し、観客の全神経を画面に集中させる。眼を凝らせ、耳をそばだてよ、と観客に迫る。照明も編集も異様なまでに細密で、なおかつ精緻な幾何学を超えて氾濫する魔力がある。なにかが起こることはわかっていても、なにが起こるのかはわからない。これはやはり、神技に近い錬金術だ。

芝山幹郎

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ABOUT THE MOVIE

  • ノーカントリー 画像2
  • ノーカントリー
  • 第80回アカデミー賞において、作品、監督、脚色、助演男優の4部門で受賞した犯罪ドラマ。1980年の米テキサスを舞台に、麻薬密売人の銃撃戦があった場所に残されていた大金を盗んだベトナム帰還兵(ブローリン)と殺し屋(バルデム)の追跡劇、そして2人を追う老保安官(ジョーンズ)の複雑な心情が描かれる。原作はピュリッツァー賞作家コーマック・マッカーシーの「血と暴力の国」(扶桑社刊)。監督・脚色は「ファーゴ」(96)、「ビッグ・リボウスキ」(98)のジョエル&イーサン・コーエン。
  • 原題:
    No Country for Old Men
    監督:
    ジョエル・コーエン、イーサン・コーエン
    脚本:
    ジョエル・コーエン、イーサン・コーエン
    製作:
    ジョエル・コーエン、イーサン・コーエン、スコット・ルーディン
    原作:
    コーマック・マッカーシー
    撮影:
    ロジャー・ディーキンス
    音楽:
    カーター・バーウェル
    出演:
    トミー・リー・ジョーンズ、ハビエル・バルデム、ジョシュ・ブローリン、ウッディ・ハレルソン、ケリー・マクドナルド
    2007年アメリカ映画/2時間2分
    配給:
    パラマウント、ショウゲート
  • 3月15日よりシャンテシネほかにてロードショー
  • オフィシャルサイト

(C)2007 Paramount Vantage, A PARAMOUNT PICTURES company. All Rights Reserved.

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