キス・オブ・ライフ

劇場公開日:

解説

突然の死を迎え、愛する家族へ自らの想いを必死に伝えようとするヒロインと、遺された家族の姿を死者の視点から描いた家族の愛の物語。人間にとって避けられない“死”というテーマを見据え、愛すること、生きること、そして家族の絆についての根源的な意味を問いかける。監督は、1970年生まれの新鋭、エミリー・ヤング。

2003年製作/86分/イギリス・フランス合作
原題:Kiss of Life
配給:ユーロスペース
劇場公開日:2004年12月18日

ストーリー

ヘレン(インゲボルガ・ダプコウナイテ)は父親(デヴィッド・ワーナー)とふたりの子供とともにロンドンに住んでいる。夫のジョン(ピーター・ミュラン)は、国連のスタッフとしてボスニア難民救援のためクロアチアに行ったまま、家族の元にもう長い間帰っていなかった。ヘレンは家族の朝食を作り、娘ケイト(ミリー・ファインドレイ)のBFからの電話にやきもきする日常。父親は老いが進んでおり、最近ではコーヒーを入れることすらままならない。夫からの電話は、最近ほとんどない。週末はヘレンの誕生日だが、約束の日に夫は帰ってくるのかどうかも分からない。すべてがちぐはぐで、すれちがうことばかりだった。その朝、ジョンから久しぶりに連絡が入る。帰国の途にいるかもしれないという希望とはうらはらに、ジョンはまだクロアチアにいた。ジョンの携帯電話は壊れており、連絡は困難になるばかり。ヘレンの「帰ってきて」という悲痛な声から逃れるようにジョンは「難民から必要とされているんだ」と、言い放ち、電話は切れてしまう。しかし電話の後、言い知れぬ不安と後悔を感じたジョンは、突如家族の元に帰ろうと決心する。しかし国連の車は狙われており、装甲車も2日後まで来ない。「国境」まで、というジョンの強い思いに負け、現地のスタッフが途中まで車で同行することになった。一方ロンドンでは、ヘレンは息子のテリー(ジェームス・E・マーティン)を学校に送るために出かける。その帰り道、幸せだった頃の自分とジョンの写真をぼんやりと見つめていたヘレンは、車にはねられ帰らぬ人となってしまう。病院に集められた家族の前を、奇跡は当然のような顔をして通り過ぎていく。しかし、奇跡は別の場所で起きていた。ヘレンは生と死のあわいの中で、そこが地上なのか天上なのか分からないまま、目覚めた。魂の存在のまま、誰もいない家に戻ったヘレンは、そこでいるはずのないジョンに遭遇する。それは、東欧にいるジョンの意識の存在でもあった。そばにいて欲しいのに訴えきれなかった激しい気持ち、いとおしい気持ち。気持ちの高揚と落胆はそのまま、すれちがいが続いたふたりの関係を象徴するかのようだ。一方クロアチア。ジョンの乗った車は故障してしまい、荒れた大地でうち捨てられた残骸のように、ジョンは途方に暮れていた。そこへ、ロバに乗ったひとりの老人が彼を手招きして、大地を後にする。老人の貨車は警備兵の検問もノーチェックのまま、悠然と大地を通り過ぎてゆく。ヘレンは娘のケイトの意識とも遭遇する。その夜、ケイトは突然の喪失感をどうしていいか分からず、母親を感じていたいがために、ヘレンがいつも着ていたサマードレスを身につけてベッドに入る。祖父は明かりのない居間で古いソファに座ったまま、動くことができずにいる。ヘレンの死は、残された家族それぞれの愛へと連鎖すべく、愛する者たちにその力を発揮していくのだった。

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映画レビュー

2.0悲しく重いストーリーで感動できるはずなのに、何も感じ取れなかった

2019年7月18日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

 いきなりの事故だった。しかも、車にかすっただけのようにしか見えなかったので、ヘレンは死んだのかどうなのかもわからなかったのだ。そして、病院で緊急手術する場面から、いきなりヘレンは家に戻った。幽霊?それとも意識だけ浮遊して帰宅したのか?息子テリーは何かを感じ取ったようであったし、じいちゃんもいきなりボケが治ったようだけど、死んだにしては、家族は平然と暮らしているし、映像に変化がなかったのです。

 家族それぞれの“夢”と“回想シーン”が交錯し、視点が誰のものかはっきりするのは夢が覚めてから。観る者からすれば、右脳で理解するよりは左脳を働かせて理解してしまう映画です。また、超常現象を信じない者であれば、この時点でつまらないと感じてしまうのです。息子テリーの持っていたトラックのおもちゃと、父ジョン(ピーター・ミュラン)がヒッチハイクしたトラックが同じであったのは唸ってしまったが、それほど意味を為さなかったのも残念。

 家族の想いを感性豊かな子供たちが見事に演じて、ジョンの“帰る”という一途な行動だけは迫力がありました。観る前は、難民問題、介護問題などを取り上げた社会派映画かと思っていたけど、これでは正反対のオカルト映画に近いかもしれません。

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kossy