イブラヒムおじさんとコーランの花たち

劇場公開日:

解説

家族の愛を知らずに育ったユダヤ人少年が年老いたトルコ商人の老人と出逢い、親子のような関係を築くヒューマン・ドラマ。エリック=エマニュエル・シュミットが、コーランと実在した祖父の思い出を元に描いたベストセラーを、「うつくしい人生」のフランソワ・デュペロン監督が映像化。イブラヒムを演じるのは、名作「アラビアのロレンス」以降40年以上にわたって国際派スターとして活躍するオマー・シャリフ。2003年のヴェネチア映画祭でシャリフは特別功労賞を受賞した。

2003年製作/95分/フランス
原題:Monsieur Ibrahim et let fleurs du Coran
配給:ギャガ
劇場公開日:2004年11月20日

ストーリー

1960年代初頭のパリ。モモ(ピエール・ブーランジェ)は、ブルー通りのアパルトマンで父(ジルベール・メルキ)と暮らす13歳のユダヤ人の少年。母は、モモが生まれてすぐ兄のポポルを連れて家を出て以来、まったくの音信不通。その寂しさもさることながら、優等生だったというポポルと比べられ、父から小言を言われることが、モモにはうっとうしくて仕方がない。そんなモモの目下の最大の関心事は、はやく初体験をすませること。毎日、アパルトマンの窓から娼婦たちの姿を眺めながら、誘い方の練習に励むモモ。「今日こそは」と意を決した彼は、貯金箱の小銭を持って、通りの向こうにあるトルコ移民の老人の食料品店へ両替に行った。店主のイブラヒム(オマー・シャリフ)には、両替の目的はお見通し。だが彼は、黙ってモモに札を手渡した。その35フランを握りしめ、通りに戻ったモモは、16歳だと年齢をごまかして娼婦を誘うことに成功。晴れてオトナの仲間入りを果たす。それからしばらくして、ブルー通りに映画の撮影隊がやって来た。近所の人たちや娼婦に交じって、モモも撮影を見学。イブラヒムの店では、女優(イザベル・アジャーニ)が買い物をした。イブラヒムが水を5フランで売りさばくのを見て、「ぼったくりだね」と声をかけるモモ。するとイブラヒムは、「君がくすねた分を取り返さなくちゃ」と言った。彼は、モモが毎日のおつかいのついでに、缶詰を万引きしているのを知っていたのだ。「ちゃんと弁償するから」と、しどろもどろになるモモに、「弁償しなくていい。でも、盗みを続けるならうちの店でやってくれ」と答えるイブラヒム。モモ宅の家計の苦しさを知っている彼は、余ったパンをあぶって食べる方法や、コーヒーにチコリを混ぜる方法、ティーバッグを乾かして再利用する方法をモモに教える。そんなイブラヒムに、モモは、父親からは得られない大きな愛情を感じるのだった。モモがイブラヒムに教えてもらったことのなかで最も役に立ったのは、笑顔で幸せをつかむ方法だった。数学の授業で問題が解けなくて困ったとき、いくら誘っても相手にしてくれなかった娼婦を口説くとき、笑顔はとても役に立った。だが、父にこの手は通用せず、笑顔を向けても「歯列矯正が必要だ」と言うばかり。ガッカリしたモモは、「僕がポポルならパパに愛されたのに。ポポルはママに笑い方を教わったはずだ」と、イブラヒムに寂しい胸中を打ち明ける。そんなモモを、「ポポルよりも100倍、君のことが好きだ」と言ってなぐさめたイブラヒムは、「足は取り替えることができないから」と、モモに靴を買ってくれた。そんなある日、失業したモモの父親が、わずかな持ち金と置き手紙を残し、家を出て行った。父に捨てられた悲しさと、束縛から解き放たれたうれしさが入り交じった複雑な思いにかられるモモ。彼は、同じアパルトマンに住むミリアム(ローラ・ナイマルク)という少女と交際を始めるが、まもなく彼女の気持ちは別の少年に移っていった。生まれて初めての失恋を体験したモモに、イブラヒムは、「彼女への愛は、永遠に君のものだ」と優しく言葉をかける。まもなく、モモの家に悲しい知らせを持って警官がやって来た。父が、マルセイユ郊外で鉄道自殺をはかったのだ。 数日後、ひとりの女性がモモの家を訪ねてくる。彼女は、モモが生まれてから一度も顔を見たことのない母親(イザベル・ルノー)だった。「迎えに来た」と言う母に、「自分は留守番のモハメッドだ」と答えるモモ。そのとき初めて、彼は、自分が母の不倫によって生まれた子供であること、そして、ポポルという兄などいないことを知る。母が去っていったあと、イブラヒムの店を訪ねたモモは、「僕を養子にして」と頼む。この申し出に、イブラヒムは大喜び。そんなふたりの前には、人種と血縁の壁が立ちはだかったが、それをなんとか乗り越えて、晴れてモモはイブラヒムの息子になった。しばらくして、赤いスポーツカーと運転免許を手に入れたイブラヒムは、モモを連れて故郷のトルコへ帰ろうと決意する。フランスからスイス、アルバニア、ギリシャをめぐる旅を通じて、本物の親子のように心を通わせていくふたり。モモを自慢の息子だと人々に紹介するイブラヒムは、「幸せだよ、モモがいてコーランの教えがある」と言いながら、特上の笑みを浮かべる。やがてトルコに到着したふたりは、イブラヒムの故郷の村をめざすが……。

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スタッフ・キャスト

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受賞歴

第61回 ゴールデングローブ賞(2004年)

ノミネート

最優秀外国語映画賞  
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映画レビュー

3.0愛は人種・宗教を超えたか?

2019年1月16日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 愛は人種・宗教を超えたか?!面白いエピソードと小ネタの集合体のような映画で、軽快なテンポ、笑える台詞で引っ張ってくれる心温まる話なのに、何か物足りない・・・

 ブタの貯金箱を割ってまでして、娼婦に相手をしてもらいたかったモモ。イメージ映像でまた貯金箱からコインを・・・映像美で攻めてくるかと思いきや、いきなり笑わせてくれる。しかも、『オーシャン・オブ・ファイアー』では存在自体で笑ってしまった、前歯の欠けたオマー・シャリフが主人公なのである。もはやアラブの英雄だった頃の面影がない・・・

 中盤からはかなりシリアスになり、父の自殺、母親の登場、優秀だった兄ポポルの謎等、モモの何かがはじけ飛ぶかのように、複雑な心理を親しき人のもとへと走らせる・・・行き場を失ったモモ少年の「養子にしてほしい」の言葉に快諾するイブラヒムがしぶかった。

 ここからは『アラビアのロレンス』も真っ青になるくらい勇ましいイブラヒム。運転免許もないのにキャッシュで車を買い、『ジンギス・カン』のように颯爽と車を走らせロード・ムービーへと変化していくのです。パリの下町が舞台になってるこじんまりとした世界観の映画だと思っていたら大間違い。色んな宗教の様式も楽しめる“宗教伝承ロード・ムービー”という雰囲気になりました。落ちも中々良かった。

 父親との葛藤、兄の謎、娼婦の今後などをもう少し描いてほしかった・・・

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kossy

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