劇場公開日 2004年10月30日

「食わず嫌いにならないで......」春夏秋冬そして春 こもねこさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0食わず嫌いにならないで......

2009年5月8日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

キム・ギドク監督は、図抜けた演出力で観客をひきこむ問題作を常に発表し続けている、韓国映画界の星のひとり。しかし、あまりに個性が強すぎることから、一本見たらもういい、と言う映画ファンも多いようです。
 そんな、キム・ギドク映画嫌いの方でも充分にこの監督の演出の素晴らしさを堪能できるのが、この作品なのです。
 美しい山々の風景の中にたたずむ湖に浮かぶ古寺が、まるで童話の世界のように神秘的に感じる、見事なオープニングから一気に観客の心は引き込まれます。その全編を通した映像美から描かれるのは、恨みや情によって惑わされる人間の一生の物語。キム・ギドク監督は、特に説教くさい演出などせず、登場する古寺の住職と同じように、物静かに悪をたしなめ、人間の業を美しい湖の風景の中で見つめます。キム・ギドク監督の作品には、時に怒りや狂乱が見られる場合もありますが、この作品では、怒りや狂乱も美しい風景の中に沈み、ただも、癒しの空間が残るのみ、というのが、何より魅力的なところです。
 キム・ギドク監督の作品が苦手な方は、特に、この作品を見て、あらためてこの監督の才能の凄さに感心してほしい、切に願うばかりです。

こもねこ