ほえる犬は噛まないのレビュー・感想・評価
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やっぱり、ポン・ジュノ長編デビュー作は何度も見ても面白い!
ポン・ジュノの初長編にあたる本作は日本公開を迎えるまでに3年もの歳月を要した。つまるところ、彼の真の凄さが咀嚼されるまでにはそれだけの熟成、発酵期間が必要だったということになる。なるほど、それもそのはず。この映画はこちらが追いついたと思ったら瞬時に手のひらからすり抜けていく。犬泥棒の追跡劇、女同士の友情、大学講師の悲哀、夫婦間に吹きすさぶ冷たい風など、描かれるエピソードはとにかくジャンルレス。日常生活から浸み出したリアルな描写の一部始終がとにかく効果的に炸裂するのも見どころだ。あと何と言ってもヒロイン役のぺ・ドゥナの「私はここにいます!」と主張するかのようなまっすぐな存在感にはまらずにいられない。彼女が勇気を振り絞る場面に登場する「黄色」もまた鮮烈だ。あれほどの心理描写をアナログで、しかも手応えたっぷりに描けるところも、ポン・ジュノという男が全くもって只者ではないことの証左と言えるだろう。
監督の根幹は変わらない
韓国映画でブラックコメディのおもしろいのがある、と
話題になってたのはずいぶん昔になってしまった。
気になってたもののずっとタイミングを逃してきた作品。
その間パラサイトでアカデミーとカンヌを受賞するのだが
いまこの作品を見ると
パラサイトに通じるものが確実にあり、
監督の根幹は揺らいでないのだと思える。
学歴は良いのに上にいけない、
貧富の構造があり、富める者をうらやむが
富めると思ってたものにも事情があったり、
はたまた陰惨で不穏な空気は常につきまとってるのに
背中合わせにシュールな笑いの空気も
同居している。
家族関係はいびつなようでもある。
しかし結びつきは固い。
処女長編作ということで若干散漫にも思えるけれども
ここに原点があると思うと非常に面白い。
とはいえ、持ち味が誰にでも好かれるものではないので
見る人を選ぶきらいはある。
それに犬好きとしては辛い場面もあり
そういったしんどさは否めない。
犬食の文化のある韓国だから生まれた作品。
でも興味のある方はぜひ一度は観てみてほしい一本だ。
犬を食べようとする衝撃で始まる
動物愛護でペットを食べるのはタブーなんだろうけど、そんなことお構いなしで衝撃を受けた前半戦。
そんな余韻を残しつつ、大学教授の椅子と学長への賄賂とか、妊婦は会社に残れない、そんな韓国の社会性を遠慮なく表現しつつストーリは展開する。韓国の国民性とか社会事情の描写はこの監督の持ち味。その後の成功の片りんを感じる。
主演のペ・ドゥナは、観客を爽やかな気持ちにさせる演技だった。
ペ・ドゥナが好きだからー!
過去数回鑑賞
監督と脚本は『グエムル 漢江の怪物』『パラサイト 半地下の家族』のポン•ジュノ
ポンジュノ監督の長編映画初作品
犬を飼うことが禁止されている団地で犬の鳴き声が聞こえる
規則を破り犬を飼う住人がいるのだ
大学の非常勤講師はそれが許せなくて犬をこっそり盗み殺そうとしたが殺せず地下室の家具に閉じ込めてしまう
飼い主の少女から犬探しの相談をうけたペ・ドゥナ演じる団地の管理事務所職員は少女の代わりに迷い犬を探しているというポスターをあちこちに貼った
そんなある日に双眼鏡で団地を監視していると黒い小犬を屋上から落とす大学の非常勤講師を目撃してしまう
なんやかんやで非常勤講師は妻が飼い始めた犬を散歩中にはぐれてしまい管理事務所経理と共に探すハメに
犬が好きで好きでたまらない人にはおすすめできない
犬死にとかお犬様を蔑称として使うなんて許さないと日頃お怒りの人にもこの作品はおすすめできない
犬を虐待する惨いシーンが多い
犬鍋には卒倒してしまい最悪嫌韓になるかもしれない
コメディーならばと気軽に観ない方が良い
現代劇で犬食文化を扱えるのは韓国映画ならでは
邦画でも『花よりもなほ』で貧乏長屋の人々が犬鍋を食べていたけどあれ江戸時代を舞台にした時代劇だし
犬食は野蛮だから懲らしめようという考えは西洋人の感覚であり日本人が加担してはいけないしむしろそういう独善的な考えの方が野蛮
映画comによると原題は『Barking Dogs Never Bite』だがそれは間違いで韓国語を直訳すると『フランダースの犬』が本当の原題らしい
なぜそのタイトルにしたのかポン・ジュノ監督の説明でもよくわからない
監督が子供の頃に観た日本のアニメ『フランダースの犬』とこの映画の内容にどんな関連性があるのか
犬が数匹ほど登場し大学の非常勤講師がカラオケで『フランダースの犬』の主題歌を歌うのだが釈然としない
ダリほどちんぷんかんぷんではないが見た目に似合わず奥深いクリエイターだなと
2000年の作品
ペ・ドゥナの出世作
この作品でペ・ドゥナの存在を知る
当時20歳くらいの若手
初鑑賞はタイトルにも惹かれたがほぼジャッケットのペ・ドゥナの表情だけで鑑賞することを決めた
彼女に一目惚れしたのだ
ペ・ドゥナの表情を見ればコメディーかそうじゃないかわかる
他の韓国の役者とは一線を画す強烈な個性を放つ名優それがペ・ドゥナ
団地の廊下や階段で追いかけっこする赤い非常勤講師と黄色いペ・ドゥナが印象的
追いかけるペ・ドゥナが住人の開いた扉に衝突するという全員集合前半のコントでよく見た志村やいかりやみたいなシーンは好き
さらに管理事務所で鼻の穴に紙を詰めてるペ・ドゥナ大好物
非常勤講師に犬を渡すときの笑顔がとても可愛い
無闇に唾を吐くババアは印象的
ペ・ドゥナ演じるヒョンナムが慕うデブの姉貴分がよく着ているTシャツに大きくデザインされた数字の「5」も印象的
まるでストロンガー城茂TシャツのSのようだ
ポン・ジュノ団地の中には、シュールで、愚かで、愛さずにはいられない人々が住んでいる
ポン・ジュノ2000年の長編監督デビュー作。
約20年後、カンヌや米アカデミーを制す世界的名匠になろうとは、この時誰が思っただろうか。
だって本作を見たら、異色の監督が現れたと思わずにいられない。
本人も自分は変わってるからヘンな映画ばかり撮る…と、何かのインタビューで言っていた。
でも、全く理解不能の“ヘン”には非ず。後の『パラサイト』にも通じる片鱗はこの頃から。
巨大団地内で頻発する飼い犬失踪事件。
それを二つの視点、シュールな人間模様の中に描いていく。
団地の管理事務所で経理をしているヒョンナム。冴えない性格で、駄菓子屋を営む友人とボケ~ッとTVを見ながら、ニュースで取り上げられる一般人が活躍して強盗を捕まえるような“ヒーロー”になる事に憧れている。
そんなある日、団地に住む女の子から居なくなった飼い犬を探して欲しいと頼まれる。
真面目で正義感ある性格。団地中に貼り紙して懸命に探す…。
その犯人。
団地の住人、ユンジュ。
大学教授のポストを狙っているが、それには学長への多額の賄賂が必要で、そんな金はナシ。家では妊娠中の妻の尻に敷かれ、彼もまた冴えず、うだつが上がらず…。
その日も電話で働き口に繋がらず、意気消沈。おまけに、何処からかうるさい犬の鳴き声。
彼の中の何かが壊れた。
たまたま見つけた子犬(少女の飼い犬)を団地の地下室に隠す…。
それが団地を揺るがす(?)大(珍?)事件の始まり…。
この両者、ニアミスが続く。
ユンジュが別の子犬を屋上から投げ落とす。それを見ていたヒョンナム。団地内を猛ダッシュで、背中を目前に捉え、捕まえるまで後一歩!…の所で、ドアが突然開いて…。
お互い、各々の立場は知らない。ある時、ひょんなきっかけで知り合う。ユンジュはヒョンナムが子犬を探していると知るが、ヒョンナムはユンジュがその犯人とは知らぬまま…。
社会の縮図とでも言うべき団地。
様々な人間模様が蠢く。
冴えない仕事にうんざり。
仕事にあり就けず、家での立場も散々。
屋上で日干し大根を作る老女。
地下室では…
ユンジュが隠した子犬を見つけ、それを鍋のメインディッシュにしようとする老警備員。
いつの間にかこの団地の何処かに住み着き、やはり子犬を見つけ食べようとする浮浪者。
犬を食べるなんて残酷だが、ある世代では普通に食べていた事あったとか。私もリアルに高齢者からそんな話を聞いた事がある。
犬が虐げられる描写もあり、犬好きにはキツイかも…。
妻にこき使われ、さらに妻が勝手に子犬まで飼う。
生活は厳しく、こちらは金の工面に苦労しているのに、犬だと!?
遂に不満が爆発。
しかしある時妻の真意を知る。妊娠を理由に仕事を解雇。退職金から唯一の自分へのご褒美として飼った子犬。退職金の残りは、夫の働き口の為に当てようとしていた。
イライラさせる妻と思いきや、実は内助の功。
そんな妻が飼った子犬を、ユンジュは散歩中に失踪させてしまう。
飼い犬を失踪させていたユンジュは今度は自分が犬を探す立場に。
奇しくもそれに協力するのが、ヒョンナム。
皮肉と言うか、風刺たっぷりと言うか…。
ペ・ドゥナが可愛い。
本作で注目され、ドラマやコメディに変幻自在。その後もポン・ジュノ作品やソン・ガンホとの共演も多く、韓国を代表する女優に。
活躍は韓国内に留まらず、日本映画やハリウッド映画にも。
彼女の活躍はこの団地の子犬失踪事件から始まった…!
ユンジュの妻の犬は見つかった。でも、ただ良かった…には終われない。彼はそれ以前の子犬失踪事件の犯人である。
遂にヒョンナムがそれを知る時が。あの時と同じ“背中”。
警察に逮捕されるとか思ってたとは違うオチに意表付かれた。
その後の二人の明暗も。
ユンジュは金が工面出来、大学教授にあり就いたが…、何故か虚しい。
ヒョンナムは本来の経理の仕事そっちのけで子犬探しばかりして、解雇。人や社会の表裏をこの団地で目の当たりにしたが…、そこからの成長と新たな出発へ晴れ晴れと。友人と行く林の中の散歩の光が美しい。
ポン・ジュノが見つめる人間への変わった眼差し。
愚かで、滑稽で、哀れでもある。
でもそんな中にも人間への愛も滲み出る。
貧困層が閉じ込められたような団地は、それこそ“半地下”の原型だ。
登場人物の言動、物語の展開もこちらが思ってるとは別の方向へ行く。
ポン・ジュノはデビュー作の頃から“異才”だった。
ポンジュノ監督の洒落た演出と音楽堪能
おしゃれで自己主張つよいフリージャズのオープニングからフリージャズで人が走る走る団地のチェース
主人公の男がカラオケで歌うフランダースの犬、ラストのカッコいい楽曲
2003年バブル時代に建設ラッシュでいい加減に建てられたマンション群、マンションいうても団地だな。ボイラーキムの都市伝説。この時すでに格差社会は広がるばかり。韓国は決まりを守らない国だ、というセリフ。犬を飼ってはいけないのに迷い犬の貼り紙貼れる。
なにはなくとも、頼れる人間関係の暖かさこれがポンジュノ監督作品らしさを醸しだす。
ヒロインと、お友達、勇気の証である車のサイドミラー
ヌナと呼べと迫るくるみ好きな献身的な妻
黄色いレインコートの応援団
電車で紙を配る困窮者の母親
貧困と、ルールを守らず肥え肥大していく権力者と富裕層
それでも、みんな少しの楽しみ、親しい人との関係を紡いで生きていくのだ
赤と黄色
他人の飼っている犬を食わない理由を考えれば、法律、倫理、文化、風習、文明などとさまざまな観点から鯨や牛との違いも含め、何が彼らに欠落していて、赦される行いとの違いを見ることができる。しかし、考えたくもないこともある。
反転させて犬を探させる立場に追い込むのは監督らしさも感じる。あれだけのことをして裁かないのもらしさかな。トイレットペーパーは回収したのか?余罪でもこの男を立件したいところ。
人間は、平等じゃないこと。
人は見た目が10割。賄賂、当たり前。弱者(ここでは妊婦、若い女性)は、リストラ当たり前。浮浪者、犯人で(余罪も)当たり前。そんな不平等が、当たり前。そんな世の中を描いた作品。本当の平等って、あるのかしら。
日常に潜む狂気
マンションに響く犬の鳴き声を疎ましく思い取った行動をきっかけに翻弄される大学の非常勤講師ユンジュ(イ・ソンジェ)、正義感ゆえ騒動に巻き込まれていく女性ヒョンナム(ペ・ドゥナ)、警備員の男、文房具店店員、ホームレスの男。
ポン・ジュノ監督が描く彼らの生々しい狂気とおかしみ、ヒョンナムの優しさと愛らしさに引き込まれた。
BS-12を録画にて鑑賞 (字幕版)
シュールリアリズムってやつですかね。最大限に説明を減らして見せると...
シュールリアリズムってやつですかね。最大限に説明を減らして見せるという、今までにない新しいものを感じました。
主役の方は、よくドラマなどで脇役で出ているような…。個人的には、電車の中で子供をおぶった中年女性が乗客の窮状を訴える文書を配るシーンに衝撃を受けました。韓国では、普通のことだったのでしょうか。あの状況ならついお金を渡してしまいますよね。
結局何が言いたいのだ、という意見もありそうですが、見てよかったと思います。さすが、ポン・ジュノ監督!
マンションで犬を飼わない方が良い理由
ポン・ジュノ長編デビュー作。
とあるマンションで起きる犬の連続失踪事件。
教授を目指すユンジュとその妻、マンションの管理事務所で働くヒョンナム、マンションの警備員、犬が唯一の家族であるお婆さん。
様々な人間のそれぞれのドラマが、一つのマンションで繰り広げられる。
可愛らしいパッケージにワンコ映画、そんなものに釣られてはいけません。
そもそも犬好きにはあまり勧められない。
最悪の(褒めてます)ワンちゃんダークコメディ。
この頃からパラサイトっぽさもあって、韓国の階層社会をマンションで表すのは流石。
上から下へ、下から上へ。
左から右へ、右から左へ。
ユンジュの赤い服とヒョンナムの黄色いパーカーの追いかけっこだったり、韓国映画らしからぬお洒落な音楽だったり、何かと芸術的。
鼻血や黄色のレインコート、脱げる靴や後ろ姿など、繰り返される事物は何かのメタファーのようだけど、何か分からず…
結局ストーリーも、説明しろと言われると難しい。
だけど面白い。理由は分からないけど面白い。
犬を誘拐して殺した奴が犬探しとかいう皮肉。
1番笑ったのが、「屋上の切干大根食べておくれ」。
まあ、観てみてください。
エンドロールもなかなか好き。
途中で強奪した、車のミラーをまだ持ってて、普通に鏡として使っているし、前述のお洒落な音楽が流れてたかと思ったら、急にロックっぽい音楽になるし。
本作を語る上で避けて通れないのが、ペ・ドゥナの可愛さ。
フード被ってるとことか、犬引き渡す時の満面の笑みとか。
これはガチ恋勢が現れるのも無理はない。可愛すぎる。
多分、ペ・ドゥナの可愛さもこの作品の重要な要素の一つなんでしょうな。
あり得なさそうであり得そうなそんなお話。
決して癒されるとか心温まる話ではないけど、定期的に観たい映画だった。
もう出来上がってる
BS12でリアタイ視聴。前の週に殺人の追憶も放送してたのに、見逃した! 今回はちゃんと見られて良かったー。
なんというか、設定が違うだけで、「パラサイト」の香りがする。主人公がおっとりして要領が悪いとか、予想外の展開になるとか、ブラックなところとか、けっこう似てる。すでに出来上がっているのね。
小型犬じゃ食べるところが少ないと思うけど、スズメやカエルを食べることもあるし、好きな人にはおいしいのかな。いろいろ風刺や皮肉をこめてるらしいことは、うっすらわかる。おもしろかった。
歪んでしまった韓国庶民の日常。ストレス社会なんですね。自殺率も高い...
歪んでしまった韓国庶民の日常。ストレス社会なんですね。自殺率も高いようです。
「韓国は規則を守らない国だからな」
中盤まではあまり大きな事が起こらぬ苦手系かと。しかし、なぜかどんどん引き込まれていく。追いかけっこはもうドキドキ(笑)
なるほどこれアカデミー監督の作品なんですね、納得。
BS12字幕版鑑賞
変わったコメディ映画だなぁ(褒め言葉)
『パラサイト 半地下の家族』でアカデミー賞を受賞した韓国のポン・ジュノ監督の長編デビュー作。『パラサイト』でポン・ジュノ監督にハマり、『グエムル』『母なる証明』『スノーピアサー』『殺人の追憶』に次いでの鑑賞です。
どういう映画かという事前知識はほとんどありませんでしたが、熱心な映画ファンとしても有名なライムスター宇多丸さんが他のポン・ジュノ作品をレビューした時に本作についても触れ、「よくできているんだけど、とにかく変なコメディ映画」と評していたのは聞いていました。
結論、確かに変なコメディ映画だった!!!
間違いなく面白いし、ポン・ジュノ監督の特有の細やかな映像演出や細部の伏線が光っており、「ポン・ジュノぽい」映画でした。『母なる証明』でもあった「ドアミラーへのドロップキック」とか、後の作品にも繋がる部分もあって、ポン・ジュノ監督好きならぜひ観てほしい作品です。ただ、動物に対する暴力描写が作中に何度か登場します。動物虐待シーンが苦手な人はご注意ください。
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大学の非常勤講師として働くユンジュ(イ・ソンジェ)は、中流階級向けの小さなアパートに住み、妊娠中の妻の給料で何とか生活するうだつの上がらない男だった。ユンジュは何とか大学教授になろうとしていたが、人付き合いの苦手な彼はなかなか教授の推薦を貰うことができず、根回しの上手い後輩に先を越される始末。そんな中、住んでいるアパートで頻繁に犬の鳴き声がすることに苛ついたユンジュは、アパートの住民がこっそり飼っていた犬を地下室に閉じ込めてしまうのだが…
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ペット禁止のはずのアパートなのに犬の鳴き声が聞こえる。妻の尻に敷かれるうだつの上がらない男が、日頃の鬱憤が溜まっていたこともあり、たまたま見掛けた犬を地下室に閉じ込めてしまう。なかなか突飛な展開ですが、似たような経験がある方ならば気持ちは分かると思います。イライラしている時に聞こえる音は神経を逆撫でされるような感覚に陥りますよね。
大学教授になりたい冴えない男のユンジュと同時並行で、アパートの管理会社に勤めている正義感の強い女性ヒョンナムのストーリーが語られます。アパートで連続する飼い犬の失踪事件を追うヒョンナムも、ユンジュと同じようなおっちょこちょいで仕事が苦手なタイプの人間であり、後半では二人が邂逅して一緒に犬の捜索を行うという奇妙な展開に発展します。時々バレそうになったりして「危ない~!!バレる~!!」って感じで面白いですよね。
ポン・ジュノ監督は『パラサイト』では住宅の高低差で、『スノーピアサー』では列車の車両によって貧富の格差を表現していましたが、本作でも「アパートの階数」で登場人物の立場や格差を上手く表現していたと思います。『パラサイト』と同様に地下には貧しく獣のような生活をする人間がいましたし。
タイトルの「ほえる犬は噛まない」っていうのはかなり意味深な言葉ですが、最後まで観れば何となく意味が理解できますね。元々は"A barking dog seldom bites."というアメリカのことわざで、「危険に見える人ほど実際は脅威ではない」みたいな意味です。アパートで連続する飼い犬の失踪事件はそれぞれ別の人物が犯人なのですが、どう考えても一番の凶悪な犯人は主人公のユンジュで、地下のホームレスはそんなに悪くないですよね。実際は犬殺してないし。しかし最終的にはユンジュの犯行はバレずにちゃっかり大学教授になりますし、ホームレスは全ての飼い犬誘拐事件の犯人として逮捕されます。一番悪いことをしていそうなイメージの地下に住むホームレスは実際は全然悪くない。まさに「ほえる犬は噛まない」ですよね。
全てのポン・ジュノ作品に通じる「社会格差」というテーマが長編デビュー作である本作からも感じ取ることができる。これは本当に素晴らしいですね。『パラサイト』などを観てポン・ジュノ監督の作品に魅了された方は必見の一作でした。オススメです!!
面白かったけど犬めっちゃ可愛そう。犬好きには赤信号。
WOWWOWでポン・ジュノ作品が一挙放送されたのでポン・ジュノお祭りタイム開始。
ポン・ジュノ監督、パラサイトの前から追っかけてればよかった!独特の笑いのセンスがブラックだけど不思議と身近に感じてハマるわ。
暗く重たく説教臭くさくなりそうな社会問題を扱いつつ、エンタメとして面白く見れるうえに伝えたいであろう問題意識みたいなものが鑑賞後に残る。理想はこうだよねって形じゃなくて世の中こんな状態になっちゃってるよって突き付けてくる感じの嫌な後味が癖になるなる。
なんて言うんでしょ清濁併呑?が当たり前にある現実を否定しないとこ個人的に好感度上がりっぱなしです。
ただ、犬は本当に可愛そうな扱いなのでフィクションの虐待受け止められない人はやめておいた方が良い。
縦の映画
何度見たろう。
団地地下、地面、屋上への垂直軸の展開。
何階建てか分からぬ居住部を丸ごと只の大空間とする異様。
縦の映画、カリオストロ、ダイハード1の書式に軽くも辛い喜劇を落とす爽快。
病的な程の折り目正しさを今や世界一のポン・ジュノ らしさとするか。
堂々たる傑作。
わからん…
何が言いたいのかわからなかった。。他の方のレビュー見て、コメディだったんだなと。ほぼ一時間見て、眠くなり、ペ・ドゥナに追いかけられるシーンで面白くなるのかなと思いきや、またペースダウン。犬はマンションから投げちゃだめだろ。
【”犬を食べる文化”と”犬を飼うことにステイタス感を覚える文化”が共存する”国”で生きる人々の姿をシニカルな視線で描き出したブラックユーモア作品。】
ー安普請のマンションで気の強い妻と暮らすヨンジュ(イ・ソンジェ)は大学教授を目指しているが、気真面目過ぎて、学長に賄賂を贈ることが出来ず、そのポストを手中に出来ない。
妻からも軽んじられ(妊娠した妻から渡されたクルミを健気に割って食べさせている・・)鬱屈した気持ちが溜まっていく・・。
そんな中、朝から煩く吠える犬の声が気になって・・。-
・ユンジュがマンションの地下の箪笥に”隠しておいた”犬を”嬉々として”犬鍋にして食べるマンション管理人の姿。
ー犬食は、最近では下火になっているらしいが”ある階層の人々”にとっては御馳走らしい・・。赤犬が特に美味いそうだ・・。食べると体が火照り、滋養強壮には抜群であるそうである・・。
(且つて、彼の国の人達から私が、マッコリを飲み過ぎた翌朝に聞いた話である。)-
・愛犬が居なくなったと、マンションの管理事務所で働くヒュンナム(ペ・ドゥナ:すっぴんに見える・・)に届ける老婦人。何とか犬を見つけようとするヒョンナム。
■交わるはずのない、”黄色いカッパ”を着たヨンジュと”赤いフード”を被ったヒュンナムのマンション内での追いかけっこ。
巡り巡って、妻が退職金で買った犬スンシャを逃がしてしまい、黄色いカッパを着て、街中に”訪ね犬”のチラシを浮かない顔で張る、”黄色いカッパ”を着たヒョンナム。
ー随所に、ポン・ジュノのセンスがさり気なく描かれる。-
<何だ感だとありながら、
漸く教授のポストを手に入れたヒョンナムが、”暗幕を下ろして”学生たちにビデオを見せる講義の際の、虚ろな表情・・
”何だ、こんな事のために学長に賄賂を渡し、酒に酔ってナムグンは事故で命を失ったのか・・、もしかしたら自分も・・。”
と、管理事務所を馘首されたヨンジュが太っちょの友人と楽しそうにピクニックをする”光差し込む”風景の対比も印象的である。
韓国現代文化への皮肉も少し伺える作品。
”フランダースの犬”のあの曲が、何ともブラックに聞こえた作品でもある。>
■蛇足
ポン・ジュノの名が全世界に知れ渡った最新作の根底に流れる思想は、初長編監督作である今作から、既に示されていたのだな・・、と思った作品でもある。
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