王は踊る

劇場公開日:

解説

実在のフランス国王ルイ14世と宮廷音楽家リュリの秘められた愛の物語。監督・脚本は「カストラート」のジェラール・コルビオ。原作はフィリップ・ボサンの『リュリ、もしくは太陽の音楽家』。撮影はジェラール・シモン。美術は「聖なる狂気」のユベール・プイユ。衣裳は「シリアル・ラヴァー」のオリヴィエ・ベリオ。出演は、「年下のひと」のブノワ・マジメル、「君が、嘘をついた。」のボリス・テラル、「パトリオット」のチェッキー・カリョ、「パリのレストラン」のクレール・ケーム、「ティコ・ムーン」のヨハン・レイゼンほか。

2000年製作/115分/ベルギー・フランス・ドイツ合作
原題:Le Roi Danse
配給:日本ヘラルド映画(アミューズピクチャーズ=日本ヘラルド映画 提供)
劇場公開日:2001年7月20日

ストーリー

1643年、ルイ14世(エミル・タルディング)は5歳にしてフランス国王になる。だが14歳になった今も政治の実権を握っているのは、母のアンヌ(コレット・エマニュエル)と宰相マザラン(セルジュ・フイヤール)で、ルイに与えられた権利はギターとダンスだけだった。その頃、イタリアからやって来た音楽家にして舞踏家のリュリ(ボリス・テラル)と出会ったルイは、彼の振り付けたダンスによって太陽王のイメージを人々に知らしめていく。そして1661年、ルイ(ブノワ・マジメル)が22歳の時、マザランが死去。全権を握ることになったルイは、まず王立舞踏アカデミーの設立を命じ、フランスの改革をはじめる。スペインの王女マリ=テレーズ(ヴェロニク・マイユ)と政略結婚したルイは、リュリにもマドレーヌ(セシール・ボワ)という娘との結婚を命じる。しかしリュリは実は男色家で、ルイを密かに愛していた。一方、どんどん権力を増していくルイは、作家モリエール(チェッキー・カリョ)の活動を支援したり芸術活動に力を入れていくが、やがて母が死の床につき、名実ともに国を支配する立場になると、芸術に対する興味が失せてしまう。1687年、リュリは怪我がもとで足を切断する必要に迫られるが、王と踊った足は切れないと手術を拒否、そのまま息を引き取るのだった。

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映画レビュー

4.5フランス音楽は欧州で一番美しく、尊敬されるべきだ ― ルイ

2023年4月14日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

フランス音楽は、
旋律といい、音色といい、バロックの頃からイタリヤ音楽やドイツの音楽とは異なった独自の枝分かれをしているのだが、そこに唯一無二の価値を認めて育成した王室の意図がこの言葉でわかり、たいへん興味深い。

太陽王ルイ14世と、その王に仕えたジャン=バティスト・リュリの物語。

◆前半は目玉としてルイ王のフランスバレエを、
◆そして後半は
リュリが作曲家としてその王の寵愛を求めて、宮廷楽士のトップの座をライバルと争いながら、身分の差を超えて、そして性別を超えて、同性のルイを愛し焦がれた、という献身の部分に重きを置く。

音楽担当は古楽研究の重鎮ラインハルト・ゲーベル率いるムジカ・アンティクヮ・ケルン! 壮麗な演奏を聴かせてくれる。

小学生の頃バレエをやっていた僕としては、目玉だと思っていたルイ王のバレエのシーンが、細切れが過ぎてちょっとがっかり。当てが外れた。
(踊りの尺が作品の中心に据えられていないのだ)。
しかしそれでも
・14歳の時の 光背を背負う「太陽」、
・青年期の「ジュピター」、
そして王として泉の前で踊る
・「黄金のアポロン」の3つのステージはたいへん素晴らしい。
(You Tubeでもその部分だけのダイジェストを見ることが出来る)。

拳の返し。腕の振り。ときおり踏み鳴らす足のステップ。ターンの美しさと眼光の鋭さには心を持っていかれる。あの気勢をあげるcollにも。
いい振付だ。
ブノワ・マジメル演じるルイの、あの練習光景と舞台の放つ豪華絢爛さには、母君の皇大后ならずとも感嘆の吐息を漏らすだろう。

時代的には、17世紀、隣国ドイツ(プロイセン)では、ちょうど同じ時期にバッハが活躍していた頃なのだが、バッハも宮廷での仕事には精力を注いでいた。バッハはフルートの名手であったフリードリヒ大王のために王宮に招かれてセッションをし、室内楽の名曲を大王に献呈している。
フランスのルイ14世といい、このプロイセンのフリードリヒ大王といい、音楽を愛し、自ら没頭して芸術の道を極めようとするArtisticな君主を戴く国家には、なにか羨望を感じてしまう。

けれとも【王の孤独】 ・・・・・・
「余に友人はいない」。
当時のヨーロッパの王室は、国家間・王室間での政略結婚は通例であり、子女の遣り取りや、王自身の欧州内の他国への転勤も頻繁だったから、さぞや彼らは精神的に不安定な生涯ではあったろうと想像できる。
あのお母さんもスペイン王の娘であり、その母(ルイの祖母)はオーストリアから。
ルイの妻もスペインのフェリペ王の娘だ。子供も孫もヨーロッパ中に散り散りバラバラに貰われていく。

取り入る配下や政敵に翻弄されながら、母の愛を受けられなかったと嘆くルイ。
3000曲を捧げ、あそこまで寵愛を求めて奉仕するリュリに対しても、王の視線はいつもどこかしら遠くて、焦点が外れている。
そして踊りをやめてしまってからの彼=ルイの暗い表情が、そんなには幸せではなかったヴェルサイユの住民たちの、孤独な心中を表しているように思えた。

・・・・・・・・・・・・・

「アマデウス」より15年ほどあとに作られた本作品だが、作曲家リュリの人物像と晩年の描写はとうしてもアマデウスの老サリエリの二番煎じ感があるし、
せっかくのバレエが上述のように細切れの編集となっていて、作品のハイライトが絞り切れていない。
男女の痴話とか、裸、リュリの下半身のモロ出しもノーカットで映る。監督は何をしたかったんだろう?

Le Loi Danse =原題に反して「王の伝記映画」ではなく、取り巻きたちが王の趣味に舌打ちしながらチラ見しただけの“添え物”の踊りのシーンになっている感すらある。
せめては映画のラストに、(どうせ半分フィクションなのだから) 後年奮起して再び踊る老成したルイ王のダンスを、しっかりと重厚に、長映しで我々に魅せてくれていればなぁ。
それならばあの「原題」をもう少し生かせたのではないかと、 監督のサービス精神の足らなさが残念至極。
そこ、観たかったのに。

・・・・・・・・・・・・・

DVD特典の
ムジカ・アンティクヮ・ケルンの録音風景と、団員の17世紀装束での演奏。
古楽ファンなら垂涎。
ラインハルト・ゲーベルが黄色いTシャツと緑のハーフパンツで、サントラのために指揮をする姿とか、これはなかなかお目にかかれるものではない。

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きりん

3.0太陽王

2021年5月2日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

 1653年、新しいヒールの高い靴をもらい舞台の中央に立ったルイ14世。頭の後ろに後光がさすような飾りをつけ、まるで太陽の化身のような神々しさが溢れる。「太陽王」とイメージされた一瞬だ。これがフロンド(貴族)の乱を鎮圧したのか?

 8年後、宰相マザランが死ぬと宰相を置かずに統治すると宣言するが、ダンスアカデミーを作るなどのたまってた。現在のバレエの原型ともなったダンスを確立した功績。リュリとモリエールのコンビによって出来上がった歌曲など興味深いエピソードが多い。

 ジャン=バディスト・リュリはフランス国籍を取得したものの男色だとの悪評もあり、次第にルイから寵愛を失いつつあった。フランスオペラの集大成を作ると約束してルイの寵愛を取り戻すところが彼の望み。そのためには喜劇を合作し続けたモリエールをも裏切ることになった。

 ラストの死に際までかなりあっさりと描かれていたけど、オペラが成功した割には愛人以外誰も友人がいなかったという虚しさが伝わってきます・・・

 冒頭シーンに成功したリュリが「国王のテ・デウム」を指揮するシーンがあり、国王の席を用意したのに来なかった・・・そして足を切断しなければならない苦痛のシーン。この史実を知らないとさっぱりわからないぞ・・・で、来なかったのか?

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kossy

3.0太陽王とは?

2021年2月26日
PCから投稿

ルイ14世と、王を愛した音楽家リュリの物語。

あの当時、バイオリンは首に挟まなかったんだな、とか
ヴェルサイユ宮殿って、ものすごい沼地に建てたんだな、とか
面白い発見があった。

ストーリーは、メインの2人をはじめ、いろんな人のいろんな愛情がぐっちゃぐちゃに絡まって進む感じ。
それぞれが、一番好きな人に好きと言えて、素直に結ばれていれば、こんなドラマは生まれないだろうね。

ルイ14世を演じたブノワ・マジメルはどこまでも美しく、
リュリを演じたボリス・テラルは鬼気迫る。
この2人の映画あってこその映画。

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UNEmi
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