劇場公開日 2023年8月18日

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「耽美な純文学」世にも怪奇な物語 Cape Godさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0耽美な純文学

2013年3月10日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

知的

難しい

総合:75点
ストーリー: 70
キャスト: 80
演出: 80
ビジュアル: 75
音楽: 65

第一作目
 自分が世界の中心と考える小人が、美と権力と金を持つとこんなに傲慢でわがままになる。昔の貴族って本当に傲慢で嫌な人だ。それが自分の愚かさがもたらした罪悪感から狂気に走る、炎に向かって文字通り走る。そして悲劇的浄化によって狂気が鎮静される、耽美な純文学だった。その耽美さがゆえに、個人的には一番気に入った。ただしジェーン・フォンダの美を少しだけ必要以上に前に出し過ぎた印象はある。貴族が馬に乗るのにそんな露出しなくても。

第二作目
 自己中心的で、人を虐げることが大好きで、そんな自分がこれまた大好きという、嫌なやつが主人公。そんな彼に現れるもう一人の自分は、彼の悪事を止めようとする彼の隠れた良心なのか、彼を正しい方向に導こうとする神なのか、それとも彼を破滅へと導く悪魔なのか。彼は社会にとっては害毒のような人なのではあるが、それにしてもこれだけのことでこの結末は厳しい。

第三作目
 主人公は酒浸りということだが、むしろ麻薬でラリッた人が夢を見ているように思える。何もかもが現実感がない。弱い自分に絶望していて、現実逃避をして、さらにそこから進んでこの世からすらも逃げ出したくなっているかのよう。実は自ら望む物を見て望む道を行ったんじゃないかな。とても妖しげで退廃的で破滅的で幻想的で、独特の雰囲気が出ているという意味では一番。世間的には三作の中で一番評価が高いらしく、知らない人だけれども主人公の役者も相当に頑張っていた。

 ところでこれって恐怖映画らしい。でも見ていて怖いと感じたことは全くなかった。原作者であるポーの小説をいくつか読んだことがあるが、世間で怖いと言われていても自分が怖いと思ったことはなかったし、現代からすれば古臭い。この作品も今の基準からすればちょっと不思議で幻想的な話という程度で、恐怖映画にはならないと思う。

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Cape God