劇場公開日 1980年2月23日

「男という生き物のネガティブキャンペーンコメディです」マンハッタン あんゆ~るさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5男という生き物のネガティブキャンペーンコメディです

2009年7月5日
鑑賞方法:DVD/BD

笑える

楽しい

知的

昔の友人でウディ・アレンの事が大好きな人がいて、「映画好きならウディの映画は絶対観なきゃダメ!」と言われたことがありました。それから時がたち中々ご縁に恵まれず、ようやく本日、ウディが監督・脚本・主演を務めた79年製作の代表作を観ることができた訳です。

ウディ演じるTVライターの主人公は、奥さんを略奪されたばかりのうだつのあがらない人。さらに略奪したのは女の人で、肝心の奥さんは奥さんでウディとの最悪な夫婦生活を書いた暴露本を出版するという設定。ウディは女に自分の奥さんを奪われたのに気がふれたのか、30も歳の離れた未成年の女の子に手を出す。

その交際は全然真剣じゃなく、それとは別に目下、彼の友人と不倫中の編集者に恋をする。それで未成年の彼女をふってその女性と交際を始めるわけですが、そこから坂を転げ落ちるように不運な出来事が重なっていく。。。

といった感じの複雑な人間関係を、ニューヨークの日常に溶け込ませ、知的なブラックユーモアを満載させながら実にあっさりと描いている訳なのです。ウディが担当した脚本は特に素晴らしく、かなりの博識と卓越したユーモアのセンスがなければ書けないような名セリフが連発します。

劇中の、口が達者で見栄っ張りだが実はかなり優柔不断な男の姿を観ながら、結局「男」という生き物が何に支えられているのかが、観た後の余韻にじんわりと残ります。そんな余韻に浸りながら、それでも何故か男であるわたくしでさえも微笑んでしまうのが本作の魅力です。

それはジム・ジャームッシュの「ブロークン・フラワーズ」と同様の不思議な感覚なのですが、ウディの作品にはよりエレガントな風味があります。このような感覚を覚えたのは、本作が初めてです。

名作と呼ばれる所以がよ~く分かりました。

あんゆ~る