悲愴

劇場公開日:

解説

ナチによって愛を引き裂かれた南米ウルグアイの外交官夫妻の姿を描く。エグゼクティヴ・プロデューサーはマーク・フォーステイター、製作はゲルハルト・シュミット、監督・脚本は「太陽の年」のクシシュトフ・ザヌーシ、撮影はスワヴォミール・イジャック、音楽はヴォイチェフ・キラールが担当。出演はジュリアン・サンズ、ルネ・ソーテンディックほか。

1988年製作/イギリス・ポーランド・西ドイツ合作
原題:Whenever You are
配給:俳優座シネマテン
劇場公開日:1989年11月17日

ストーリー

'45年、ウルグアイのモンテビデオでジュリアン(ジュリアン・サンズ)は2度目の妻に、戦後間もないワルシャワへ行くことを告げる。--'38年、戦前のワルシャワ。美しい新妻ニーナ(ルネ・ソーテンディック)を伴って、外交官のジュリアンがポーランドに赴任してきた。友人の田舎の所有地で遅ればせながらの新婚旅行を送っていたある日、落馬したニーナは奇跡的に軽い打撲症で助かるが、以後ポーランドに起きる想像を絶する悲惨な出来事を予見し、苦しみ始める。一方のジュリアンは、管理を任されている工場がポーランド人虐殺のための武器の隠し場所としてナチに利用されていることを知り、部下のスターシュ(マチェイ・ラヴァキエヴィッチ)とともにそれを破棄するが、密告者によって彼は殺され、ジュリアンはその密告者を殴りつけるが、何も知らないニーナがこの現場を目撃し、それは2人のわだかまりとなり、やがてニーナの理性は失われてゆく。妻への愛情は深い罪の意識と重なり、ジュリアンは最良の治療を施そうとするが、精神分裂症と診断されたニーナに治療の方法などなかった。ところが、ついに彼女をサナトリウムへ委ねようとした時、ニーナは正気を取り戻した。夫の忍耐と深い愛情に感謝したニーナは、2人で二度目の田舎への旅行に旅立つが、彼女の症状が再発し幸福は長く続かなかった。前よりも悪くなった妻の様子に、ジュリアンは彼女をサナトリウムに送りポーランドを去った。戦争が勃発したのはその直後だった。--ニーナが殺された精神病院跡を訪ねたジュリアンは、医師から彼女の最期を聞き、ドイツ兵に処刑される直前に正気を取り戻したことを知り安堵する。そして今ようやく、ジュリアンはニーナを強く感じることができるのだった。

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映画レビュー

3.5理性への信頼を貫くことが困難な時代に

2017年2月6日
PCから投稿

悲しい

DVD化されていないクシシュトフ・ザヌーシ監督の作品を、VHSの中古品を取り寄せて鑑賞した。
人間の理性を根拠に、戦争は起きないだろうという見解を示した主人公は、他者からは楽観主義だと指摘を受ける。恐らくは今、同じことを主張したとしたら、同じように非難されるかもしれない。それでも理性を信じ、貫いた人間の悲劇とかすかな希望を、静かに見つめ、後世に語り継ごうとする監督の姿勢が感じられる。
主人公は正気を失った妻の理性が失われていないことを最後まで信じ抜き、妻が最後を迎えるその瞬間に、それは現実のものとなる。そこに、監督の強い理性への信頼を感じた。
今、この不安定な時代にこそ見直す価値のある作品である。

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