ハリーの災難

劇場公開日:

解説

「泥棒成金」に次いでアルフレッド・ヒッチコックが製作・監督した、死体をめぐるスリラー喜劇。原作はアメリカの新進作家で異色題材を扱うことで知られているジャック・トレヴァー・ストーリー。脚色は、「泥棒成金」のジョン・マイケル・ヘイス、撮影は「裏窓」のロバート・バークスと、いずれもヒッチコック作品ではお馴染みのスタッフの他、音楽はバーナード・ハーマンが担当している。なお、歌曲“旗をふって列車をタスカルーサへ”はマック・デイヴィッド作詞、レイモンド・スコット作曲。主な出演者は、ブロードウェイの舞台でダンサーとしての才能をうたわれたシャーリー・マクレーンの抜擢をはじめ、「北京超特急」のエドモンド・グウェン、「ブラボー砦の脱出」のジョン・フォーサイス、「ダニー・ケイの黒いキツネ」のミルドレッド・ナットウィック、「セールスマンの死」のミルドレッド・ダンノックなど。

1955年製作/アメリカ
原題:The Trouble with Harry
配給:パラマウント
劇場公開日:1956年2月8日

ストーリー

もみじの美しいヴァーモント州の森の中で不思議な事件がおこった。4つになった男の子アーニー・ロジャース(ジェリー・マシューズ)が森に遊びに行って、男の死体を見つけた。村の人々のなかにこの男を殺す動機を持っていると疑われるものがいた。死体はハリーという男だった。映画の主役はこのハリーの死体なのである。死体が発見された時、もと船長であったアルバート・ワイルスという中年の男(エドモンド・グエン)は、兎を射っていて、あやまって殺人を犯したものと信じてしまった。ミス・グレヴリーという中年女(ミルドレッド・ナットウィック)は森の中でハリーに襲われ、ハイ・ヒールのかかとで頭をなぐりつけたので、それが死因であると思い込んでしまった。ジェニファー・ロジャー(シャーリー・マクレーン)という若く美しい後家も、疑われるだけの理由を持っていた。ジェニファーは死体を見つけたアーニー少年の母親で、ハリーはジェニファーの2度目の良人だった。アーニーの父親である最初の良人ロバートが死んだ時、ロッバートの兄のハリーが無理にジェニファーと結婚、ジェニファーはハリーに愛情がないことを知って、ヴァージニアの田舎に身を隠したのだが死体を発見した朝、ハリーが突然訪れてきて家に入り込もうとしたので、牛乳のビンでなぐりつけた。ハリーは眼がくらんで、ふらふらと森の中に姿をかくし、その後死体となって発見された。もう1人疑われる理由を持っていたのはサム・マロー(ジョン・フォーサイス)という青年画家だった。サムはジェニファーを愛していて、ジェニファーもサムに想いをよせていたので、名目だけの良人であるとはいえ、ハリーの存在が邪魔であるのは当然のことだった。こうして、4人のものがそれぞれの立場を考えて、夕方から朝にかけてハリーの死体を埋めたり掘り返したりした。ワイルス船長ははじめに兎とまちがえて射殺したと思ったが、しとめた兎をアーニーが拾っていたことがわかって、自分に罪がないことを知ったし、ミス・グレイヴリーは死体を埋めることをたのんでからワイルス船長と親しくなり、かねてからひそかに想い合っていたことがわかると、晴れて夫婦になりたいと思い、それには埋めた死体を掘り出して正統防衛を主張した方がいいと考えた。サムはワイルス船長に話を持ちかけられて、死体を埋める手伝いをしたが、ジェニファーと結婚するとなると、ハリーが死んだことを明らかにしなければならないので、埋めた死体を掘り出さなければ都合が悪かった。そのうちに、ハリーの死体の靴を盗んだ浮浪者がつかまって、シェリフの手伝いをしているカルヴィン(ロイヤル・ダノ)が活躍をはじめた。ハリーの死体に共通の関心を抱いた4人は相談のあげく死体を森の中のもとの所へ置いて、改めてアーニーに見つけさせようと企てた。この企てはどんな結果になるか。

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スタッフ・キャスト

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映画レビュー

3.5大自然に死体。緊張感ゆるゆるな不条理ムービー

2020年4月23日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

ヒッチコック作品の中でもひときわ異彩を放つ一作だ。大自然の中で見つかった男の死体。気のいい元船長は自分の猟銃の流れ弾に当たったのだと思い、通りかかったご婦人とも結託して隠蔽に努めるのだが、やがて意外な真相が判明し・・・。冒頭から男の子が死体を発見するブラックさを香らせつつ、「自分のせいだ」と口にする元船長はフワフワとしていてどこか緊張感に欠ける。目の前の死よりも、全く別のところに気を取られているご様子。これを見た人は「なんてシュールな」と困惑してしまうはずだ。そんな矢先、ふと思い出したのはベケットが52年に発表した「ゴドーを待ちながら」。待てども暮らせどもゴドーは一向にやってこない。やってくる気配さえない。この不条理さはどこか55年の映画「ハリーの災難」と似ている。新しいもの好きなヒッチコックが当時の最先端の不条理ジャンルに挑戦した、いわば実験作のようなものではないかとも感じる一作である。

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牛津厚信

4.0【”誰がハリーを殺したの!”誰もが容疑者の疑いがある中、何度も土に埋められては掘り返される無言のハリーと彼と繋がりが在った人たちとの姿を描いたブラック・コメディ。クスクス笑える作品です。】

2023年12月27日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

笑える

知的

幸せ

■秋の森で、ハリーという男が死体となって発見される。
 すると、第一発見者である少年アーニーの母親ジェニファー・ロジャース(シャーリー・マクレーン)、ハリーに襲われそうになった中年婦人グレイブリー、禁漁区で狩猟をしていた元船長ワイルスら、ハリーを殺したのは自分だと信じて疑わない人々が次々と現れて、物語は次なる次元に移って行く。

◆感想<Caution!内容に触れています。>

・最初からハリーが倒れているのに、誰も彼の死体を保安官補のカルビンに届けずにオロオロする姿が可笑しい。

・可哀想なハリーは、何度も土に埋められ、再び掘り返されるのである。クスクス・・。

・散策しているグリーンボウ医師に至っては、彼が倒れているにも関わらず、何度も彼の傍を本を読みながらブツブツ言い続けている。
ー で、ハリーに引っ掛かって転ぶ。-

■売れない画家、サム・マーロウ(ジョン・フォーサイス)の絵を全て買うというお金持ちが現れて、マーロウはハリーの死で憂鬱になっていた人たちに贈り物をするのである。
 その姿を見て、ハリーの妻であったジェニファー・ロジャースはハリーと違って紳士的なマーロウに惹かれるのである。

<で、ハリーが死んだ原因を明かすグリーンボウ医師の言葉。思わず脳内でずっこけるが、皆がホッとする姿が、コレマタ可笑しいのである。(ちょっと、可哀想なハリーだが、彼の生前の容疑者達が言う行いを考えると、仕方がないかな、とも思ってしまうのである。クスクス。
 今作は、アルフレッド・ヒッチコック監督がブラックユーモアとサスペンスを絶妙に織り交ぜたコミカルなミステリー作品なのである。>

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NOBU

1.5最初の誤射の設定が甘い

2021年6月10日
PCから投稿
鑑賞方法:TV地上波

中盤からはいいが、

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未読

3.5ハリーのつぶやき

2020年7月7日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

やっと見つけたんだよ
まさか私のことをそんなふうに思っていたとは知らなかった
私はただただ彼女のことを思ってやって来ただけなのに
殴らなくたっていいじゃないか
頭はクラクラしてきてどうにも焦点が定まらない
どうにもまともに歩くことさえできないではないか

もう一度彼女に言おう、戻ってほしいと
力尽くでも連れて帰ろう、きっと彼女は悲しくて辛い生活をしているはずなのだから
なのに今度は靴で殴られてしまった
どうも胸まで苦しくなってきた、あぁ〜息をするのも辛い
苦しい、痛い、胸が痛い……

子供が居る…
誰かが私の足を持って引っ張ろうとしているぞ

まったくとんでもない一日だった、一日か?
昨日の明日は明後日じゃなくて今日のはずなのに
とにかくもうゆっくりとさせておくれ
とんだ災難だ

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カルヴェロ
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