白馬の伝説

解説

トラベラーズ(旅職人)と呼ばれるアイルランド・ジプシーの兄弟と不思議な白い馬の冒険を、リアリズムと神話的ファンタジーが調和したタッチで綴った一編。スタッフ、キャストにアイルランド出身の人材が結集し、アイルランド・スピリッツ溢れる作品となった。アイルランド・ジプシーというあまり知られることのなかった存在を、言語や衣装に至るまで忠実に描き出している点が注目される。ゲール地方の伝説に基づくマイケル・ピアースの原案を、「マイ・レフトフット」のジム・シェリダンが脚色し、「フォー・ウェディング」のマイク・ニューウェルが監督。現地の荒涼とした風景を巧みにとらえた撮影は「今夜はトーク・ハード」のトム・シーゲル、独特のアイルランド・メロディーをフィーチャーした音楽はパトリック・ドイルが担当。主演はアイルランド出身で「アサシン」のガブリエル・バーン(脚本に惚れ込んだ彼は、製作補佐も兼任)と、「ボーイズ・ライフ」のエレン・バーキンで、撮影当時、夫婦だった2人が息の合ったところを見せる。兄弟役のチャーラン・フィッツジェラルドとルーアリー・コンロイは、「遥かなる大地へ」でも共演しているイギリス映画界の名子役。

1993年製作/アイルランド・イギリス・アメリカ合作
原題:Into the West

ストーリー

アイルランド、ダブリンの難民居住アパートで幼い息子2人と暮らすライリー(ガブリエル・バーン)は、かつては腕のいい職人だったが、妻に先立たれてからは酒びたりの日々を送っていた。そんな環境にありながら、ティトー(ルーアリー・コンロイ)とオッシー(チャーラン・フィッツジェラルド)の兄弟はけなげに生きてきた。ある日、海岸から現われた美しい白馬と出会った兄弟は、ティアナノグと名付けた馬を母の生まれ変わりと信じて、大切に世話をする。ところが、アパートの住民の通報で、ティアナノグは警察に連れて行かれ、強欲なボルジャー警部補(ブレンダン・グリーソン)によって売り飛ばされる。数週間後、悲しみに暮れる兄弟は偶然にもティアナノグがレースの競争馬になっていたことを知る。怒った兄弟は競馬場からティアナノグを連れ出し、そのまま西へ向かって逃避行を始めた。警察に子供たちの行方を追求されたライリーは、ジプシー時代の友人キャスリーン(エレン・バーキン)の力を借り、2人の捜索に向かう。一方、見知らぬ土地を馬を駆って進む兄弟は、すっかり西部劇のヒーロー気分。狐狩りの一団と遭遇したり、映画館に潜り込んだりと、冒険気分を満喫していた。危険な目に遇うと、ティアナノグが不思議な力で救ってくれ、警察や牧場主の追跡をかわす事ができた。一方、ライリーは旅を通じてかつての明るさと逞しさを取り戻し、ついに子供たちと再会する。ティアナノグは固い絆を取り戻した家族の姿に満足したかのように、海に向かって消えていった。

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