劇場公開日 1989年8月12日

チェドのレビュー・感想・評価

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3.0鼓動するアフリカ

2022年2月21日
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強制的なイスラム主義化によって村落を支配しようとする西洋人と、その圧政に立ち向かう反逆者(チェド)たちの物語。

イスラム宣教師たちはコーランを暗誦させたり焼きごてで黒人たちの足にイスラム教徒の印を刻みつけたりと悪逆非道の限りを尽くすんだけど、それによって黒人の村人たちの精神性が根本的に毀損されているかといえばそんな感じはしない。

たぶん村人たちにはイスラム教の厳格な教義さえ凌駕するような別の規範意識が備わっているのだと思う。たとえば冒頭で王の娘がチェドたちに誘拐されるシーン。王たちはすぐさま刺客を派遣すればいいものを、村中の人々を集めて緊急協議を開く。

この協議もしっちゃかめっちゃかの大激論というよりは法廷上のディベートに近い。各々が各々の見地から各々の意見を述べる。もっとすごいのは奴隷たちが薪を頭に載せたままじっと協議に耳を傾けているところ。誰一人として逃げ出さない。私なら絶対逃げちゃうと思う。

たぶんそこにはイスラム教以上に彼らを強く縛り付ける何らかの共通観念が存在している。

本作は基本的にきわめて緩慢なトーンで物語が進行していくため、はっきり言って退屈だ。しかしその退屈さにはちゃんと力強さがある。そこには一般的な映画の法則すら貫通する村人たちの規範意識が顕れている。

安易なオリエンタリズムは避けるべきだということは重々承知の上で、私は本作から強烈に漂うアフリカ文化の鼓動を感じずにはいられなかった。

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