真実の瞬間

劇場公開日:

解説

「シシリーの黒い霧」のフランチェスコ・ロージが脚本・監督した彼にとって初めてのカラー作品。撮影は「挑戦」以来ロージの全作品を手がけている故ジャンニ・ディ・ヴェナンツォ、音楽は「シシリーの黒い霧」のピエロ・ピッチオーニが担当。出演は現に闘牛士として人気の絶頂にあるミゲル・マテオ・ミゲランをはじめ大部分が素人である。俳優としてはリンダ・クリスチャンが特別出演している。製作は「81/2」のアンジェロ・リッツォーリ。テクニカラー、テクニスコープ。

1965年製作/イタリア
原題:Il Momento Della Verita
配給:東和=ATG
劇場公開日:1967年4月1日

ストーリー

復活祭を数日後に控えた聖週間の行事にスペインの町々は浮かれたっていた。大寺院のまわりは群衆でうずまり、通りに面した家々の戸口は花で飾られ、ベランダには人が鈴なりであった。三月末に行われるこの行事は、闘牛シーズンの始まりを告げる祭りでもあった。真紅なけしの花とわずかな緑の樹木以外はすべて黄褐色という南部農村地帯は大地主が権力をふるい、農民の生活はみじめだった。貧農の息子たちはそんな生活を嫌って職と夢を求めて北部の都市に出ていった。ミゲル(M・M・ミゲラン)もその一人で、バルセロナに出て来たものの、フランコ独裁政権下の都市労働者の生活は想像以上に悪く、絶えず失業の恐怖におびやかされていた。だから彼はてっとりばやく金が儲かる仕事の闘牛士になろうと決心し、養成所の門をたたいた。老闘牛士ペドルーチョ(P・B・ペドルーチョ)はミゲルの才能を認め熱心に稽古をつけた。彼はめきめき腕を上げ、ついにマドリッドの闘牛場でその腕前を見せる時が来た。スペイン一の興行師ドン・ホセ(J・G・セビラーノ)も観客の中にいた。ミゲルは余裕を持って猛り狂う黒牛を倒した。そして夢にまで見た正式の闘牛士として認められたのだった。それからのミゲルの生活は華美をきわめた。しかし強行スケジュールによる体の疲労がひどく、ある雨の日の試合で初めて敗北を喫した。恐怖に襲われた彼はついに引退を考えたが、興行師はミゲルの傷より契約の破棄を心配し、彼に試合を強行させた。また旅が始まった。しかし自分の意志通りに行かない闘牛士生活に堪えがたい重味を感じはじめていた彼は、ある日、彼の技倆をもってすれば当然さけられるはずの牛の一撃で、その短かい一生を終えたのだった。

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映画レビュー

5.0とどめを刺す刹那に閃く真実

2023年11月24日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:TV地上波

悲しい

知的

萌える

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かせさん

4.0闘牛士の光と影を鮮烈なネオレアリズモで描く青春残酷物語

2020年4月17日
PCから投稿
鑑賞方法:TV地上波

フランチェスコ・ロージはネオレアリズモを代表するヴィスコンティ監督の「揺れる大地」でフランコ・ゼフィレッリと共に監督助手をして、その後継者になりました。オペラや商業映画に活躍したゼフィレッリと比較すると地味で鑑賞機会も少なく残念でなりません。ただこの作品はそのネオレアリズモのロージの素朴なスタイルと闘牛士の陰影を主題とした内容が合い、独特な世界観を醸し出しています。
主演は当時人気最高の闘牛士ミゲル・マテオ・ミゲランが演じ、貧しい農村出身の青年を好演しています。各地を転々とする闘牛興行シーンは実際のプロですから迫力があり素晴らしいですが、人気闘牛士になって故郷に帰り束の間の安らぎを得るところもいい。

ドキュメンタリーよりのリアリズムで描かれた、青春の栄光と虚無。独自の詩的な青春文学の趣があります。

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Gustav

5.0作品そして記録として尊いもの

2018年5月19日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

知的

興奮

スペインの闘牛というものを克明に描ききっており、闘牛とはどんなものなのかこれを見れば一目瞭然、これを超える“説明”は皆無に等しいように思ってしまった。
古典的なストーリー展開ではあるけれど、丁寧な描写とともに迫力ある映像により非常に引き込まれ、流れがシンプルが故に、非常に面白いと感じられる。
面白いのと同時に、闘牛の魅力と衰退してしまう理由が明確に記録されていて、作品というものを超越した歴史的記念碑に似たようなものを感じる。
いろんな意味でこのような映像をつくり出すことは、もはや不可能に近いだろう。
とはいえ、ドキュメンタリーとフィクションの融合という観点からすると、非常に参考になるような作品だと思うし、これを超えるリアリズムを常に欲するところではある─まぁネオリアリズモの頂点を極めるような作品なので、非常に難儀なことだろうけれど…。

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SH
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