小便小僧の恋物語

劇場公開日:

解説

ベルギーの首都ブリュッセル市内にある小便小僧(マネキン・ピス)像をモチーフに、路面電車の女性運転手とこの町に流れてきた青年の慎ましやかな恋を描いたメルヘン。監督はベルギーの名門映画学校サン・リュックを経て数々の短編を手掛け、これが初長編となる64年生まれの新鋭フランク・ヴァン・パッセル。脚本もこれが初長編のクリストフ・ディリックス。主演はベルギーの演劇畑で活躍するフランク・ヴェルクライセンとアンチュ・ドゥ・ブック。95年カンヌ国際映画祭批評家週間青春賞、95年モントリオール映画祭新人賞・国際批評家協会賞、96年ゆうばり国際冒険・ファンタスティック映画祭審査委員特別賞をそれぞれ受賞。

1995年製作/90分/ベルギー
原題:Manneken Pis
配給:ユーロスペース
劇場公開日:1996年7月6日

ストーリー

ある夏の日、12歳のハリーは家族とドライブ旅行に出掛けた。幸せな光景は、ハリーが踏切でおしっこをしている間に一転した。突然車が踏切内で立ち往生し、そこへ電車が突っ込んだ。後には小便小僧のように立ち尽くすハリーだけが残された。18年後、ブリュッセルにたどり着いたハリー(フランク・ヴェルクライセン)はマネキン・ピス通りで電車を降りると、女性運転手のジャンヌ(アンチュ・ドゥ・ブック)に教えてもらった道を探し、少しエキセントリックな管理人ドゥニーズ(アン・ペーテルセン)のアパートメントに住み始める。レストランに職を見つけた彼は、ほどなく車庫に帰るジャンヌの運転する電車に乗り合わす。フロント・ウインドウを打つ雨がジャンヌの顔を飾るのを見て、ハリーはかつてない感情を抱いているのに気づく。帰り道、靴屋のショウ・ウインドウを覗いて「私に似合うのはどれ?」と尋ねる彼女に、ハリーは金色のスパンコールが散りばめられた靴を指さした。彼女が同じアパートメントに暮らしていることを知ったハリーは、ディナーに招待する。メイン・ディッシュはお手製のチキン・ポット・パイ。それはあのドライブの前日に、たった一度母親が作ってくれた料理。彼は幼い日のことを思い出す。「愛してる」と言った次の瞬間、家族みんながいなくなったことを。次の日、孤児院に送られたハリーは、髪の毛が全て抜け落ちていた。そして、それから二度と「愛してる」と口にしなくなり、「愛する」という感情が分からなくなっていた……。ドゥニーズのしつこい監視にもめげず、二人は少しずつ、愛を育んでいた。季節はずれの海にピクニックに出掛けた日、ハリーはあの金色の靴をジャンヌにプレゼントする。喜ぶ彼女は「愛してる」と囁くが、ハリーはその瞬間、硬直してしまう。ジャンヌは怒って帰ってしまい、二人の関係はそのまま修復することはなかった。ジャンヌはハリーへの当てつけに、付き合ってみると優しいドゥニーズと連日ダンスホールに通いつめる。一方、ハリーは仕事仲間のベルト(ヴィム・オプブルック)とデジレ(スタニー・クレッツ)の勧めで、仲直りの口実に車を買うことを思いつき、夜はジャンヌの通うダンスホールのバーテンダーとして働く。しかし、ある夜、ジャンヌが踊りの最中に気絶してしまう。月と星が美しい静かな夜。ハリーがあの日から決して口にしなかった言葉を言った時、ジャンヌは星になっていた……。ハリーは車庫の中の電車に座っていた。すると電車は独りでに動き始め、あの海辺に続く森の道を走り続けた。

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