劇場公開日 1991年9月14日

コルチャック先生のレビュー・感想・評価

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4.0「カティンの森」より優先させた作品!

2021年4月1日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

図書館からレンタルして、
岩波ホールでの上映以来、
約30年ぶりに鑑賞。

しかし、岩波ホールで購入していた
パンフレットに驚くべき記述があった。

“ワイダ監督は,「カティンの森」の演出を
信頼する助監督に任せて
(ワイダ監督は監修として名を連ねた),
「コルチャック先生」に全力を投じた”
とあるではないか。

「コルチャック先生」は1990年作品、
「カティンの森」は2007年の作品だ。
「カティンの森」は初上映の17年も前に
製作に着手されかかっていたのか、
しかし実行されず、その後改めて
自らの監督で世に出したことになる。
いずれにしても父親が犠牲者だった
ことから、執念の題材だったはずの
「カティンの森」を差し置いてでも
優先製作した「コルチャック先生」も
ワイダ監督にとって
重要な意味を持つ作品だったのだろう。

コルチャック先生がその道の権威であること
は幾つかの場面で顕されるが、
この作品では結構、別の面も披露される。
「世のため、人のため…は嘘です。
…自分のため…」とのラジオ放送発言や
「200人の子供がいるだけだ。誇りなどない」と
コメントしたり、短気だったり、
陰でこっそり酒を飲んでいたりする
身近な人間くさい描写も多い。
コルチャック先生は高名な方とはいえ、
ワイダ監督は、当時、犠牲になったたくさんの
“コルチャック先生的人々”がいたと
伝えたい意図があったのではないかと
勝手に想像した。

またこの映画の稀有なところは、
同じユダヤ人でも、
階層やドイツ兵への利便性の有無によって
運命が区別される現実を描いていることだ。
もっともそれも一時的な扱いで、
いずれは同じ結果だったことも示唆したが。

そして、ラストの幻想シーンには
涙を誘われるばかりであった。

専門である医師職を超えて人道活動をされた
結果、犠牲になったコルチャック先生は、
同じ医師としてアフガニスタンで灌漑事業で
復興に携わり命を落とされた中村哲さんを
想起させてくれた。

因みに、私のワイダ監督ベスト3は、
 ①カティンの森
 ②地下水道
 ③灰とダイヤモンド
です。

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KENZO一級建築士事務所