劇場公開日 1972年4月

恋人たちの曲 悲愴のレビュー・感想・評価

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3.0チャイコフスキーの苦悩に満ちた私生活をスキャンダラスに描いたケン・ラッセル監督の異色作

2022年1月25日
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鑑賞方法:映画館

ロシアを代表する偉大な作曲家チャイコフスキーの伝記映画。しかし、これを観たチャイコフスキーは、どう感じるだろう。何故ならチャイコフスキーの音楽における業績を賛美するのではなく、様々な恋愛関係の縺れをドロドロとした暴露劇の様に描いているからだ。最初から意味あり気に、チャイコフスキーが学生時代に同性との関係があったかのような描写がある。富豪のナジェンダ・フォン・メック未亡人からの有名な資金援助のエピソード、アントニーナ・ミリューコヴァとの結婚に失敗する逸話と、最後はコレラに罹って亡くなる結末まで、一応は史実に基づいた脚本であるようだ。耽美的で奇麗な音楽の名曲を後世に遺した天才の苦悩に満ちた私生活に焦点を絞った異色作。イギリス映画界でもスキャンダラスな映画作りが特徴のケン・ラッセル監督の個性は充分窺えるし、映画表現の面白さもそれなりにある。

  1976年 12月3日  大塚名画座

ケン・ラッセル監督作品は意外と観ている。「ボーイフレンド」「狂えるメサイア」「マーラー」「トミー」「リストマニア」「バレンチノ」「アルダート・ステーツ/未知への挑戦」「クライム・オブ・パッション」「ゴシック」「サロメ」「白蛇伝説」「レインボウ」「チャタレイ夫人の恋人」と毛色の変わった作品ばかり。ただ、ラッセル作品で忘れられないのは、初期のテレビ用に制作された作曲家エルガーの伝記映画だ。この演出は見事と感心したが、後の商業映画では挑発的なタッチが良くも悪くも強調される様になる。

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Gustav