ゲバラ!

劇場公開日:

解説

「大いなる西部」「頭上の敵機」のサイ・バートレットが製作したゲバラ伝。ストーリーはサイ・バートレットと、TV「弁護士プレストン」のデイヴィッド・カープ、脚色は、同じくサイ・バートレットと、「猿の惑星」のマイケル・ウィルソン、監督は「絞殺魔」リチャード・フライシャー。撮影はチャールズ・ウィーラー、音楽は「ブリット」のラロ・シフリンの担当。出演は「約束」のオマー・シャリフ、「ラスベガス強奪作戦」のジャック・パランス、「アメリカ アメリカ」のリンダ・マーシュほか。

1969年製作/アメリカ
原題:Che!
配給:20世紀フォックス
劇場公開日:1969年7月12日

ストーリー

キューバ革命をめざすカストロ(ジャック・パランス)と、82名のゲリラ部隊を乗せたヨットがラス・コロラダスに上陸したのは1956年であった。その中に医師ゲバラ(オマー・シャリフ)がいた。部隊が奥地に進んだとき、キューバ政府軍が空陸呼応して迎え撃った。そして、救急鞄を紛失したゲバラは、ついに銃を持って立ったのである。激戦が展開され、ゲリラ部隊は巧妙なジャングル戦術を駆使して政府軍を悩ました。2年後、ゲリラ隊は、サンレ・クララでバチスタ将軍の部隊を撃破し、カストロは凱旋将軍としてハバナに入城。政権をとった。だがゲバラは、さらに南米13ヵ国の革命を企図した。62年、キューバから姿を消したゲバラは66年ボリビアに潜入した。手をかしたのは、ボリビア情報省に籍を置くアルゼンチン出身の女闘士タニアである。やがて17名のキューバ同志と、ボリビアのシンパを加えてゲバラは、ゲリラ部隊を組織。餓えと戦い政府軍と転戦。だが戦いは利あらず、次第に部下を失っていった。そのうえ、タニアの戦死。そしてある日、ゲバラは負傷し政府軍の捕虜となった。悲劇の英雄といわれたゲバラが銃殺されたのは、ヒゲラスの町のとある学校の庭であった。

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映画レビュー

3.0ペストかコレラか!

2020年1月3日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

 映像はゲバラの死から始まり、それに至る経緯を関係者のインタビュー(俳優の演技)やカストロとの葛藤や戦闘シーンによって補っていく手法。アメリカ映画なのでもちろんゲバラ万歳やキューバ寄りではないのだが、カストロだけには敬意を払っていたような印象が残る。

 ゲリラ軍を率いていたフィデロ・カストロ司令官。医師として参加していたチェ・ゲバラも隊のお荷物のような扱いだったが、彼の意見に徐々に耳を貸すようになり、やがてゲバラが頭角を顕すようになっていく。計画したハバナ急襲作戦が成功してキューバに新政府樹立した革命軍であったが、「2年かけてハバナを制圧したが、2日で飽きた」と愚痴るゲバラ。彼の心はボリビアに向いていて、世界革命を成そうという夢想家たるキャラを印象づけている。少々やけっぱちになった一面も表し、「アメリカに対抗したければソ連に核基地を作らせればいい」と口走ったりする。しかし、結局は「アメリカ帝国主義かソ連帝国主義のどちらかに隷属してしまう」ことになると混乱するゲバラ。カストロとの意見の違いも露わになってくる。そう、結局ゲバラにはキューバ愛がなかっただけなのだ。アルゼンチン生まれの彼は南米全てに人民革命をという大きな夢が邪魔してたにすぎないのだった。

 結局は母国愛、愛国心が無ければ人民の心は掌握できないと主張するカストロに反対して、海外へと逃亡するゲバラ。ボリビアでも貧しい農民たちは迫害されているはずだ。と、彼らを解放しようとキューバの時と同じくゲリラ戦を繰り広げるのだ。

 祖国愛溢れるボリビア農民にはゲバラの思想が伝わらない。軍のクーデターで政治が腐敗していたところで彼らの地味な平和には影響を与えていなかったのかもしれない。貧乏でもいい。戦争にさえ巻き込まなければ・・・むしろ農民たちのほうが現代的であり、反戦平和を願っていただけなのだと思う。多分、徴兵されたり、増税で苦しめられたりすることさえ無ければ政府が誰であってもかまわない。だから、森の中で銃を撃つゲバラを嫌っていた。

 全体的にはゲバラの反国家主義が打ち出されているものの、ゲバラ著「ゲリラ戦争」がバイブル的な影響力を持ち、軍事政権幹部でさえ読んでいたため、同じ手法でゲバラが拘束されることになったのだ。自分の書いた書によって殺されるという、なんたる皮肉。結局のところ、“革命の父”にはなれたが、“革命の神”にはなれなかったというところか・・・かなり中立的、客観的には描いているが、虚しい死に方をどうとらえるかは個人の自由だ。ただ、ゲバラがボリビアを選んだことだけは間違っていたと重く伝わってくる。

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kossy
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